たけのこ赤軍の自由帳

整数論とかNonaReevesとかが好きな中学生のブログ。

クロネッカーの極限公式

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:


NONA REEVES 地球儀と野鼠



前回の記事

o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com

で解説した定理2、RAES(実解析的アイゼンシュタイン級数)のフーリエ展開を使うときが再びやってまいりました。

続きものなので、前回の記事を読んでいない方は先に読むことをおすすめします。



[クロネッカーの極限公式]

q=e^{2\pi iz}として関数

\displaystyle\Delta(z)=q\prod_{n=1}^{\infty} (1-q^m)^{24}

を定める。このとき、

\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)=\frac{1}{6}\log\left(y^6|\Delta(z)|\right)

\Delta(z)ラマヌジャンが発見した関数の一種で、いわゆる保型形式というやつです(その中でも正則な部類に入る)。

これは今まで学んだ数学の中で僕が一番好きな関数なので、今後幾つか関連記事を書こうと思います。


[証明]


予告した通りRAESの展開を使うのですが、すこし変形しておきます。

まず第二項の分子にある\hat{\zeta}(2s-1)を関数等式によってこう変形します:

\displaystyle\begin{eqnarray}\hat{\zeta}(2s-1)&=&\hat{\zeta}\left(1-(2s-1)\right)\\&=&{\pi}^{-\frac{2-2s}{2}}\Gamma\left(\frac{2-2s}{2}\right)\zeta(2-2s)\\&=&\pi^{s-1}\Gamma(1-s)\zeta(2-2s)\end{eqnarray}

分母にある\hat{\zeta}(2s)は定義どおりにそのまま展開すると、以下のようになりました:

\displaystyle E(s,z)=y^s+\frac{\pi^{s-1}\Gamma(1-s)\zeta(2-2s)}{\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)}y^{1-s}\displaystyle +\frac{4}{\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)}\sum_{m=1}^{\infty} m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

これにちょっと細工をしてやることで\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)を求めていくのですが、その前にちょっとだけ準備をしましょう。

まず、ガンマ関数のローラン展開について考えます。この関数は-n(n\in\mathbb{N})1位の極を持つ以外に極はないので、ローラン展開の負部分はs^{-1}の項で打ち止めですね。

つまり、こう書けるわけです:

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{\Gamma(s)}&=&\frac{1}{\frac{1}{s}+O(1)}\\&=&\frac{s}{1+O(s)}=s+O(s^2)\end{eqnarray}

ここでO(s^n)は「s^n以上の項」のような意味です。

さて、これを用いることでいい感じの関数f(s)に対して以下のようなことができます:

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{f(s)}{\Gamma(s)}&=&\left(f(0)+O(s)\right)\left(s+O(s^2)\right)\\&=&f(0)s+O(s^2)\end{eqnarray}

これを、\displaystyle f(s)=\frac{\pi^{s-1}\Gamma(1-s)\zeta(2-2s)}{\pi^{-s}\zeta(2s)}\displaystyle\frac{4}{\pi^{-s}\zeta(2s)}に対して適用すると

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{\pi^{s-1}\Gamma(1-s)\zeta(2-2s)}{\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)}&=&\frac{\pi^{-1}\Gamma(1)\zeta(2)}{\pi^{-0}\zeta(0)}s+O(s^2)\\&=&-\frac{\pi}{3}s+O(s^2)\\ \frac{4}{\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)}&=&\frac{4}{\pi^{-0}\zeta(0)}s+O(s^2)\\&=&-8s+O(s^2)\end{eqnarray}

より、E(0,z)=1が従います。また、

\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)=\log{y}-\frac{\pi}{3}y-8\sum_{m=1}^{\infty} m^{-\frac{1}{2}}\sigma_{1}(m)\sqrt{y}K_{-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

もすぐにわかりますね。\sigma_1(m)はわざわざ添え字を書くのもアホらしいので\sigma(m)としておきましょう。

そして、式中には\displaystyle K_{-\frac{1}{2}}(2\pi my)なんてのが出てきていますが、前回の記事・定理3で

K_s(z)=K_{-s}(z)

を示しているので、一般に

\displaystyle K_{\frac{1}{2}}(z)

の計算方法がわかればこれも計算できます。では調べてみましょう。

\displaystyle K_{\frac{1}{2}}(z)=\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{-\frac{1}{2}}du

において、\displaystyle v=\frac{z}{2}uというふうに変数を変換します。すると、

\displaystyle\frac{du}{dv}=\frac{2}{z}

なので、

\displaystyle\begin{eqnarray}u^{-\frac{1}{2}}du&=&\left(\frac{2v}{z}\right)^{-\frac{1}{2}}\frac{2}{z}dv\\&=&v^{-\frac{1}{2}}\sqrt{\frac{2}{z}}dv\end{eqnarray}

ということに注目すると

\displaystyle\begin{eqnarray}K_{\frac{1}{2}}(z)&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{-\frac{1}{2}}du\\&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\frac{z}{2}\left(\frac{2v}{z}+\frac{z}{2v}\right)\right)v^{-\frac{1}{2}}dv\sqrt{\frac{2}{z}}\\&=&\frac{1}{\sqrt{2z}}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\left(v+\frac{z^2}{4v}\right)\right)v^{-\frac{1}{2}}dv\\ \frac{d}{dz}\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)&=&\int_{0}^{\infty} \left(-\frac{z}{2v}\right)\exp\left(-\left(v+\frac{z^2}{4v}\right)\right)v^{-\frac{1}{2}}dv\\&=&-\frac{z}{2}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\left(v+\frac{z^2}{4v}\right)\right)v^{-\frac{3}{2}}dv\end{eqnarray}

ここで、再び変数変換\displaystyle w=\frac{z^2}{4v}を行います。今度は、

\displaystyle\frac{dv}{dw}=-\frac{z^2}{4w^2}

なので、

\displaystyle\begin{eqnarray}v^{-\frac{3}{2}}dv&=&-\left(\frac{z^2}{4w}\right)^{-\frac{3}{2}}\frac{z^2}{4w^2}dw\\&=&-w^{-\frac{1}{2}}\frac{2}{z}dw\end{eqnarray}

より(この変数変換で一度積分範囲が上下逆に入れ替わってることに注意してください)、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{d}{dz}\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)&=&-\frac{z}{2}\int_{\infty}^{0} \exp\left(-\left(w+\frac{z^2}{4w}\right)\right)w^{-\frac{1}{2}}\left(-\frac{2}{z}\right)dw\\&=&\int_{\infty}^{0} \exp\left(-\left(w+\frac{z^2}{4w}\right)\right)w^{-\frac{1}{2}}dw\\&=&\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\left(w+\frac{z^2}{4w}\right)\right)w^{-\frac{1}{2}}dw\\&=&-\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)\end{eqnarray}

となって、関数\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)は簡単な微分方程式

f'(z)=-f(z)

を満たすことがわかりました。これの解は、Cを定数として

\displaystyle\begin{eqnarray}f(z)&=&Ce^{-z}\\&=&\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)\end{eqnarray}

とされます。z=0とすることで、

\displaystyle\begin{eqnarray}f(0)&=&C\\&=&\int_{0}^{\infty} e^{-v}v^{-\frac{1}{2}}dv\\&=&\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)\\&=&\sqrt{\pi}\end{eqnarray}

より、

\displaystyle K_{\frac{1}{2}}(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}}e^{-z}

が得られました。

これを先程導いた\displaystyle \frac{\partial}{\partial s}E(0,z)の表示式に代入すると

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)&=&\log{y}-\frac{\pi}{3}y-8\sum_{m=1}^{\infty} m^{-\frac{1}{2}}\sigma(m)\sqrt{y}K_{-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)\\&=&\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)\\&=&\log{y}-\frac{\pi}{3}y-8\sum_{m=1}^{\infty} m^{-\frac{1}{2}}\sigma(m)\sqrt{y}\sqrt{\frac{1}{4my}}e^{-2\pi my}\cos(2\pi mx)\\&=&\log{y}-\frac{\pi}{3}y-4\sum_{m=1}^{\infty} \frac{\sigma(m)}{m}e^{-2\pi my}\cos(2\pi mx)\end{eqnarray}

これで定理左辺の計算は終わったので、右辺の計算に移行しましょう:

\displaystyle\begin{eqnarray}\log(y^6|\Delta(z)|)&=&6\log{y}+\log|\Delta(z)|\\&=&6\log{y}+\mathrm{Re}\left(\log\Delta(z)\right)\\&=&6\log{y}+\mathrm{Re}\left(\log\left(e^{2\pi iz}\prod_{n=1}^{\infty} (1-e^{2\pi imz})^{24}\right)\right)\\&=&6\log{y}+\mathrm{Re}\left(2\pi i(x+iy)+24\sum_{n=1}^{\infty} \log(1-e^{2\pi imz})\right)\\&=&6\log{y}-2\pi y-24\mathrm{Re}\left(\sum_{n=1}^{\infty} \sum_{m=1}^{\infty}\frac{e^{2\pi imnz}}{m}\right)\end{eqnarray}

実部の計算は面倒なのでそこだけ抜き出して行うと、

\displaystyle\begin{eqnarray}\mathrm{Re}(e^{2\pi imnz})&=&\mathrm{Re}(e^{2\pi imnx-2\pi mny})\\&=&\mathrm{Re}(\cos(2\pi mnx)+i\sin(2\pi mnx))e^{-2\pi mny}\\&=&e^{-2\pi mny}\cos(2\pi mnx)\end{eqnarray}

となるので、

\displaystyle\begin{eqnarray}\log(y^6|\Delta(z)|)&=&6\log{y}-2\pi y-24\sum_{n=1}^{\infty} \sum_{m=1}^{\infty} \frac{1}{m}e^{-2\pi mny}\cos(2\pi mnx)\\&=&6\log{y}-2\pi y-24\sum_{l=1}^{\infty} \frac{\sigma(l)}{l}e^{-2\pi ly}\cos(2\pi lx)\end{eqnarray}

がわかります。最後の変形では、シグマの変数mnを新しい変数lに改めています。

これを\displaystyle\frac{1}{6}倍してシグマの変数をlからmに差し替えることで、

\displaystyle \frac{1}{6}\log(y^6|\Delta(z)|)=\log{y}-\frac{\pi}{3}y-4\sum_{m=1}^{\infty} \frac{\sigma(m)}{m}e^{-2\pi my}\cos(2\pi mx)

となって、定理左辺と一致しました。これにてクロネッカーの極限公式、証明終了です。



しかし、どこか物足りない感じがしますね。

定理左辺の\displaystyle \frac{\partial}{\partial s}E(0,z)、これはRAESをs微分して0を代入することを表しています。

しかもRAESの定義において、変数sはシグマ内部をまるごとs乗するというところに現れています。

となると、正規積に関連付けたくなりますね。実際、そういった言い換えが存在します:




[クロネッカーの極限公式・正規積バージョン]

\displaystyle\prod_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \frac{|mz+n|}{\sqrt{y}}=2\pi\left(y^6|\Delta(z)|\right)^{\frac{1}{12}}


[証明]

正規積の定義(以下記事参照)より、
o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com

\displaystyle a_{m,n}=\frac{|mz+n|}{\sqrt{y}}

としておきます。数列のゼータは「もとの数列を-s乗してシグマに入れる」が定義でしたから、こうなります:

\displaystyle \zeta_{\mathrm{K}}(s)=\sum_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \left(\frac{|mz+n|}{\sqrt{y}}\right)^{-s}

ここのゼータの右下にくっついてる\mathrm{K}クロネッカー(Kronecker)の\mathrm{K}です。デデキントゼータじゃないので代数体とかのKとかではありません(岩波書店の数論2という本ではこのゼータは\zeta_{\mathrm{K}}(s)ではなく\varphi_2(s)として表記されていますがなんかダサいのでやめました)。

ではコイツの計算をしていきましょう:

\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta_{\mathrm{K}}(s)&=&\sum_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \left(\frac{\sqrt{y}}{|mz+n|}\right)^{s}\\&=&y^{\frac{s}{2}}\sum_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \frac{1}{|mz+n|^s}\\&=&2\times\frac{1}{2}y^{\frac{s}{2}}\sum_{l=1}^{\infty} \sum_{(c,d)=1}^{} \frac{1}{|lcz+ld|^s}\\&=&2\times\frac{1}{2}y^{\frac{s}{2}}\sum_{l=1}^{\infty} l^{-s}\sum_{(c,d)=1}^{} \frac{1}{|cz+d|^s}\\&=&2\zeta(s)E(s,z)\end{eqnarray}

なので、微分して0を代入することで

\displaystyle\begin{eqnarray}\left.\frac{\partial}{\partial s}\zeta_{\mathrm{K}}(s)\right|_{s=0}&=&\left.2\zeta'(s)E\left(\frac{s}{2},z\right)+2\zeta(s)\frac{\partial}{\partial s}E\left(\frac{s}{2},z\right)\right|_{s=0}\\&=&-\log(2\pi)-\frac{1}{2}\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)\end{eqnarray}

です。ただし、\displaystyle \zeta'(0)=-\frac{1}{2}\log(2\pi)E(0,z)=1を使っています。

前者は記事「等差数列の無限積」で示した定理でa=1,b=1とした結果の対数を取ってマイナスを付けることで得られ、後者は記事「実解析的アイゼンシュタイン級数」で記載しました。

すると残った計算は\displaystyle \frac{\partial}{\partial s}E(0,z)だけになりますが、これはそのままクロネッカーの極限公式を使えば良いですね。

したがって、

\displaystyle\begin{eqnarray}\left.\frac{\partial}{\partial s}\zeta_{\mathrm{K}}(s)\right|_{s=0}&=&-\log(2\pi)-\frac{1}{12}\log\left(y^6|\Delta(z)|\right)\\&=&-\log(2\pi)\end{eqnarray}

です。これにマイナスを付けて指数関数に入れれば、

\displaystyle\begin{eqnarray}\exp\left(-\zeta_{\mathrm{K}}'(0)\right)&=&\prod_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \frac{|mz+n|}{\sqrt{y}}\\&=&2\pi(y^6|\Delta(z)|)^{\frac{1}{12}}\end{eqnarray}

となって定理が示されました。



クロネッカーの極限公式、以上で終了です。

次回記事では、これを利用していくつかの無限積の特殊値などを求めていこうと予定しています。お楽しみに。