たけのこ赤軍の自由帳

反復積分とNona ReevesとPrinceとRED SPIDER

奇数ゼータのある級数表示

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:

The Jacksons - Heartbreak Hotel

Michael Jackson Heartbreak Hotel Live Yokohama 1987


今回の記事は Wikipediaリーマンゼータ関数 - Wikipedia に記載のある「ラマヌジャンが得た \zeta(2n+1) の表示」についてです。

様々な証明があるようですが、(2018年現在)高校生の私にはラマヌジャンによる原証明にはアクセスできませんでした。ネット上に上がっている文献は Berndt(読みがわからない)によるものや片山孝次さんのものがありますが、前者は outline だけで後者は n=1 の場合しか示しておらず、きちんとしたフルの証明が得られませんでした。
しかし今年3月の研究集会で加藤正輝さんに教えていただいた結果では、「二重余接関数のある種の加法型公式」の系としてかの公式の一般形が得られるそうです。私はコレに興味を持って勉強しました。2ヶ月。


結論から言うと、あまりよくわかりませんでした。


というのも、証明に出てくるゲルフォント-シュナイダーの定理(超越数で有名なアレ)の使い所がイマイチよくわからなかったためです。signed double Poisson summation formula が鍵を握っていることはわかるのですが、それ以上は。。。という状態。



ということで自力で (nが奇数の場合の、偶数のときは easy) 新証明を構築しました。少なくとも私が知ることのできる範囲では指摘されていませんでした。
いつしか話した ``4次元モノイドゼータ" の構成がおおいに役に立ちます。


さて
o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com
補題2の証明後すぐにある等式
\begin{eqnarray}\displaystyle \zeta_4^M(s)&=&\frac{1+e^{i\pi s}}{1+e^{\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{3i\pi s}{2}}}\left(\zeta(s)+\frac{(-2\pi i)^s}{\Gamma(s)}\sum_{n=1}^{\infty} \sigma_{s-1}(n)e^{-2\pi n}\right)\end{eqnarray}
が効いてきます。後ろの総和が
\begin{eqnarray*}\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty} \sigma_{s-1}(n)e^{-2\pi n}&=&\sum_{n=1}^{\infty} \sum_{m=1}^{\infty} m^{s-1}e^{-2\pi mn}\\&=&\sum_{m\geq{1}} m^{s-1} \frac{e^{-2\pi m}}{1-e^{-2\pi m}}\\&=&\sum_{k=1}^{\infty} \frac{k^{s-1}}{e^{2\pi k}-1}\end{eqnarray*}
となることはすぐにわかります(ランベルト級数)。さて我々は今回 \zeta_4^M(-4k-2) を各 k=0,1,2,\cdots に対して求めていくことになります。ロピタルの定理を使うだけのちょっとした計算問題なので読者の皆さんにおまかせしますが、この表示から言えることは
\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta_4^M(-4k-2)=\frac{i}{\pi}(2\pi)^{-4k-2}(4k+2)!\left(\zeta(4k+3)+2\sum_{n\geq{1}} \frac{n^{-4k-3}}{e^{2\pi n}-1}\right)\end{eqnarray*}
です。

で一方、\zeta_4^M(s)=\zeta_2(s,1,(1,i)) なので(黒川ノーテーション)、今得た特殊値は多重ゼータの解析接続からも得られることがわかります。
ただ残念なことにその結果は一般的な形で書かれた文献がありませんでした(私が見た限り)。証明はかんたんで、例えば「現代三角関数論」§2.2の計算と全く同様にしてできるほか、片山さんと大槻さんの論文 ``On the multiple gamma function" の命題1には0と-1の場合における結果が与えられています。

ここで一般的に書くなら、まず多重ベルヌーイ多項式
\begin{eqnarray*}\displaystyle\frac{e^{-wt}}{\prod_{j=1}^r (1-e^{-\omega_jt})}=\sum_{n\geq{r}} a_{r,n}(w,{\boldsymbol{\omega}})\end{eqnarray*}
で定義すれば
\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta_r(-n,w,{\boldsymbol{\omega}})=(-1)^nn!a_{r,n}(w,{\boldsymbol{\omega}})\end{eqnarray*}
となります。これも演習問題でええか。



となればこれらの結果を等置したくなりますね!!!




後者の結果を我々の値のために具体的に書くなら
\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta_4^M(-4k-2)&=&\zeta_2(-4k-2,1,(1,i))\\&=&(4k+2)!a_{2,4k+2}(1,(1,i))\end{eqnarray*}
ですね。さらに、私が書いた今年の夏休みの自由研究にある命題2.1 (4)からこの定数をベルヌーイ数の積で具体的に書くことができます(これも証明はかんたんで、実際の自由研究では一般の多項式としての a_{r,n} に対して示しています。本記事では付録で証明)。つまり、
\begin{eqnarray*}\displaystyle a_{r,4k+2}(1,(1,i))=-i\sum_{j=0}^{2k+2} \frac{B_{2j}B_{4k+4-2j}}{(2j)!(4k+4-2j)!}(-1)^j\end{eqnarray*}
ですね。ここから先程得た値と合わせて、容易に求めたかった等式
\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta(4n+3)+2\sum_{n\geq{1}} \frac{n^{-4k-3}}{e^{2\pi n}-1}=-\sum_{j=0}^{2k+2} \frac{B_{2j}B_{4k+4-2j}}{(2j)!(4k+4-2j)!}(-1)^j\end{eqnarray*}
を得ることができます。

なおラマヌジャンの実際のリザルトはこれよりももう少し広い範囲(というか保型形式的な観点で)から見ているようなのですが、この手法をその定理に使えるまでに一般化できないかと模索中です。


[ほだい]

 k\geq{-r} にたいして
\begin{eqnarray}\displaystyle a_{r,k}(w,{\boldsymbol{\omega}})=\sum_{l=-|B|}^{|A|+k} a_{|A|,k-l}(a,A)a_{|B|,l}(b,B).\end{eqnarray}
がせいりつする. ここで B\neq{\emptyset}\{\omega_1,\cdots,\omega_r\} のぶぶんしゅうごうで, A=B\setminus{\{\omega_1,\cdots,\omega_r\}}, a,ba+b=w をみたすふくそすうとする.


[しょうめい]

\begin{eqnarray*}\displaystyle e^{-at}\prod_{j\in{A}} (1-e^{-\omega_jt})^{-1}&=&\sum_{L\geq{-|A|}} a_{|A|,L}(a,A)t^L\\e^{-bt}\prod_{j\in{B}}(1-e^{-\omega_jt})^{-1}&=&\sum_{M\geq{-|B|}} a_{|B|,M}(b,B)t^M.\end{eqnarray*}
であるから
\begin{eqnarray*}\displaystyle\sum_{N\geq{-r}} a_{r,N}(w,{\boldsymbol{\omega}})=\sum_{L\geq{-|A|},M\geq{-|B|}}a_{|A|,L}(a,A)a_{|B|,M}(b,B)t^{L+M}\end{eqnarray*}
よりわかる.


[しゃじ]

このほだいのしょうめいをかんがえてくれた、ぬ (@nu_un_nu_un_nu) くんにかんしゃします。


[さんこーぶんけん]
かたやま こうじ, おおつき まこと, ''おん ざ まるちぷる がんま ふぁんくしょん", とうきょう じゃーなる おぶ ませまてぃくす, ぼりゅーむ 21, なんばー 1 (1998), 159 ぺーじから 182 ぺーじ.
ぼく, ''じぇねららいずど すたーりんぐ ふぉーみゅら ふぉー まるちぷる がんま ふぁんくしょん", なつやすみのじゆうけんきゅう.