たけのこ赤軍の自由帳

数論とかNonaReevesとかが好きな高校生のブログ。

三角関数の周期性について

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:
Queen - 輝ける七つの海

Queen - Seven Seas Of Rhye (Official Video)


本記事は 好きな証明 Advent Calendar 2018 - Adventar 24日目に急に空きができたので滑り込んだ記事です。23日目の記事はせきゅーんさんによる [:title] でした。


三角関数といえば、周期性ですね。

高校で数IIをやっていると、\sin(x+2\pi)=\sin x という式は息をするように使うものです。

このことの証明にはいろんなものがあります。高校で習う標準的なものは「円は 2\pi で一周するからそら一致するやろ」というものですね。これは三角関数が単位円によって定義されているからこそできる技です。



しかしこの記事はわたくし、たけのこ赤軍が書いているのです。多重サインを使わずして何が証明か。

というワケで、「多重三角関数を使った三角関数の周期性証明」をやっていきましょう。

この証明は恐らく誰もやったことがない、即ちぼくが考えたぼくのオリジナルの証明になります。なんで誰もやってないかって?こんなまどろっこしいことやらんでも証明できるからに決まっとるやろアホたれ



まずは定義のおさらい。

\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta_r(s,w;{\boldsymbol{\omega}})=\sum_{{\bf n}\geq{\bf 0}} ({\bf n}\cdot{\boldsymbol{\omega}}+w)^{-s}\end{eqnarray*}

は多重フルヴィッツゼータ関数で、w,\omega_i\,(i=1,\cdots,r) の実部は正。

\begin{eqnarray*}\displaystyle\Gamma_r(w;{\boldsymbol{\omega}})=\exp(\zeta'_r(0,w;{\boldsymbol{\omega}}))\end{eqnarray*}

で多重ガンマを定義して、\zeta's での微分。多重三角関数

\begin{eqnarray*}\displaystyle S_r(w;{\boldsymbol{\omega}})=\Gamma_r(w;{\boldsymbol{\omega}})^{-1}\Gamma_r(|{\boldsymbol{\omega}}|-w;{\boldsymbol{\omega}})^{(-1)^r}\end{eqnarray*}

で定義します。ただし |{\boldsymbol{\omega}}|=\sum_{i=1}^r \omega_i です。

多重ガンマで遊んでいるとこの定義を一日一回書かないと気が済まなくなります。



さて、次は「BM型」というのを導入しましょう。多重ガンマは知っててもBM型のものは知らない、という人も多いのではないでしょうか。おい誰や多重ガンマ自体マイナーとか言うた奴しばくぞ。

BMというのは「Barnes-Milnor」の略で、バーンズは多重ガンマ関数の創始者ですが、ミルナーはガンマ関数を別の方向で一般化しています。要するにBM型というのはこれら二つの融合というわけです。

ミルナーの行った一般化は、レルヒの公式において微分してから s=0 の代わりに適当な負の整数を代入してやろうというものです。ということなので、k\geq{0} に対してBM型多重ガンマ関数を次で定めます:

\Gamma_{r,k}(w;{\boldsymbol{\omega}})=\exp(\zeta'_r(-k,w;{\boldsymbol{\omega}})).

BM型多重サインも同様に S_{r,k}(w;{\boldsymbol{\omega}})=\Gamma_{r,k}(w;{\boldsymbol{\omega}})^{-1}\Gamma_{r,k}(|{\boldsymbol{\omega}}|-w;{\boldsymbol{\omega}})^{(-1)^{r+k}}


さて下準備は完了。今から使うのは二つの定理。

「ラーベの積分公式」と「キンケリンの公式」というやつです。

各々の証明は

N.Kurokawa, M.Wakayama - PERIOD DEFORMATIONS AND RAABE'S FORMULAS FOR GENERALIZED GAMMA AND SINE FUNCTIONS
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyushujm/62/1/62_1_171/_article/-char/ja

N.Kurokawa, H.Ochiai - GENERALIZED KINKELIN'S FORMULA
https://projecteuclid.org/download/pdf_1/euclid.kmj/1183475511

にあります。主張だけ抜き出しておくと、ラーベの公式が

\begin{eqnarray*}\displaystyle\underbrace{\int_0^1\cdots\int_0^1}_{l} \log S_{r+l,k}(w+{\bf t}\cdot{\boldsymbol{\alpha}};({\boldsymbol{\omega}},{\boldsymbol{\alpha}}))\,d{\bf t}=\frac{(-1)^lk!}{|{\boldsymbol{\alpha}}|_{\times}(l+k)!}\log S_{r,l+k}(w;{\boldsymbol{\omega}}).\end{eqnarray*}

で、キンケリンの公式が

\begin{eqnarray*}\displaystyle\int_0^w \log S_{r,k-1}(t;{\boldsymbol{\omega}})\,dt=\frac{1}{k}\log\frac{S_{r,k}(w;{\boldsymbol{\omega}})}{S_{r,k}(0;{\boldsymbol{\omega}})}\end{eqnarray*}

というものです。右下にバッテンついてるのは成分全部掛けるって意味ね。



さて、ラーベの公式のほうで l=1 ととってみましょう。添字を付ける意味もないので \alpha_1=\alpha とします。見やすいように t\mapsto{t/\alpha} と変換しておくと、

\begin{eqnarray*}\displaystyle\int_0^{\alpha} \log S_{r+1,k}(w+t;({\boldsymbol{\omega}},\alpha))\,dt=-\frac{1}{k+1}\log S_{r,k+1}(w,{\boldsymbol{\omega}})\end{eqnarray*}

というふうになりますね。さらに t\mapsto{t-w} とすると、

\begin{eqnarray*}\displaystyle\int_w^{w+\alpha} (k+1)\log S_{r+1,k}(t;({\boldsymbol{\omega}},\alpha))\,dt=-\log S_{r,k+1}(w,{\boldsymbol{\omega}})\end{eqnarray*}

となります。さてキンケリンの公式からわかるように (k+1)\log S_{r+1,k}(t;{\boldsymbol{\omega}},\alpha) の原始関数として \log S_{r+1,k+1}(t;{\boldsymbol{\omega}},\alpha) がとれるので、左辺を計算して両辺 \log をはずすと

S_{r+1,k+1}(w;{\boldsymbol{\omega}},\alpha)/S_{r+1,k+1}(w+\alpha;{\boldsymbol{\omega}},\alpha)=1/S_{r,k+1}(w,{\boldsymbol{\omega}})

となります。そしてここで r=0, k=-1, \alpha=1/2 ととると、よく知られた事実 S_{1,0}(w;\alpha)=S_1(w;\alpha)=2\sin(\pi w/\alpha)S_0(w;-)=-1 より

2\sin(2\pi w)/2\sin(2\pi(w+1/2))=-1

即ち

\sin(2\pi w)=-\sin(2\pi w+\pi)

がわかります。あとは x=2\pi w とでもおいてこの式を二回使えば

\sin x=sin(x+2\pi)

が示せました。以上です。








聖夜に何やってんだ俺。

最終日の記事はキグロさんの 月の表面が粗いことの証明:呟きの補集合 - ブロマガ です。