BM 型多重ガンマ関数とその周辺 (1)
この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:
Prince - Days Of Wild
Prince - Days of Wild
最近、私の BM 型多重ガンマ関数に関する結果が二つ出ました:
[1905.08068] The $q$-multiple gamma functions of Barnes-Milnor type
[1906.00344] Asymptotic Expansions for the multiple gamma functions of Barnes-Milnor type
しかしまぁ知名度の低い分野であることには変わりなく、この場でゆる~い入門記事でも書こうと思います。前提知識の要求はしませんが、変形はそこまで親切ではないのでちょっと慣れている必要があるかもしれません。
Barnes の多重ゼータ関数を以下で定めます:
ここで , は実部が正の複素数 個の組とします。 は整数 個の組で、和の約束 は に対して を意味するものとします。
変数 はとりあえず実部が正としておきましょう。級数は今のところ で絶対かつ一様に収束するので、とりあえずこの範囲内で考えておきます。
いろいろやることはありますが、とりあえず特殊値でも計算してみましょう。準備のため多重 Bernoulli 多項式 を以下で定めます:
が の 次多項式であることは簡単に示せます。さて実部が正の $a$ に対する古典的な公式
によって
がわかりますね。さてこの積分を次のようにカチ割りましょう:
この「被積分関数(の一部)を Laurent 展開して有限項ぶっこ抜く」は後々使う便利なメソッドなので覚えておいてください。
さてこのとき明らかに は整関数で、かつ は中身が で ぐらいのサイズなので で正則ですね。というワケで
\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta_r(-n,w,{\boldsymbol{\omega}})&=&\lim_{s\rightarrow{-n}}\frac{1}{\Gamma(s)}(I_1(s)+I^n_2(s)+I^n_3(s))\\&=&\lim_{s\rightarrow{-n}} \frac{1}{\Gamma(s)}\int_0^1 \left(\sum_{k=-r}^{n} a_{r,k}(w;{\boldsymbol{\omega}})t^k\right)\\&{}&\times t^{s-1}\,dt\\&=&\lim_{s\rightarrow{-n}}\frac{1}{\Gamma(s)}\sum_{k=-r}^n \frac{a_{r,k}(w;{\boldsymbol{\omega}})}{s+k}\\&=&(-1)^nn!a_{r,n}(w;{\boldsymbol{\omega}})\end{eqnarray*}
となります(最後でガンマ関数の留数の情報を使いました)。コレは Hurwitz ゼータの負整数点での値が Bernoulli 多項式で書けるという結果の一般化です。
あともういくつか の情報をみていきましょう。母関数は を満たすので、係数比較すると
となります。微分するとマイナスがついて位数 (って言っていいのか?) が下がる、というワケですね。
んで次は二つの母関数 , を畳み込んでみましょう: 計算はめんどい (マジで畳み込むだけ) ので略しますが、
となります。
ちょっと休憩。続きはまたいつか。