q-多重ガンマの話
この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:
Prince - Controversy
Prince - Controversy - 01/30/82 - Capitol Theatre (OFFICIAL)
q-多重ガンマ関数、というのがあります。ガンマ関数は皆さんご存知、階乗の一般化です。指数関数のメリン変換とかいわれるのが多いですね。
んで、多重ガンマ関数というのはガンマ関数の「多重化」というものです。いろいろ変数を増やして一般化したもので、「一重ガンマ関数」は普通のガンマ関数にあたります。
要するにq-多重ガンマというのは多重ガンマ関数のq-類似というわけですね。q-類似というのは既存の概念(関数とか)に という新しいparameterを導入して一般化することです。 の極限で元の概念になるように定めるものです。
数学(とくに解析学)に出てくるモノになんでもかんでもqをくっつけて遊ぶことを「q-解析」といいます。
数学というのは「数を学ぶ」と書きますので、当然最も基本的なモノは「数」ですね。古代からヒトは数をいじって遊んでおりました。現代でも小さい子供がお風呂に入ると「百まで数えてから出なさい」とか言われたりしますね。
そうするとお風呂に入れられた子供は「ただ一から百まで数えるのもつまらないから、q-一からq-百まで数えよう」と思うわけですね。一生懸命に「いち、いちたす、いちたすたす」という具合に数えていくわけです。
そう、自然数 のq-類似は になるのです。「なるのです」というかそう定めるのです。もちろん とも書けますね。こっちのほうがカッコええな。
では自然数が定まったところで、q-多重ガンマを作りましょう・・・と言いたいところですが、まずその前にq-解析で非常によく出てくるやつを定めます。
これはq-ポッホハマー記号とかいうやつです。 とか とかの範囲は割とどうでもいいですがまぁ気になる方は とでもしておいてください。
さてこいつには右下に の記号がついておりますね。要するにこいつはq-ポッホハマーの中でも「無限版」だということです。
無限版があるということは当然有限版もありますね。それはこんな感じです:
見れば分かるように とも書けますね。
さて「q-ポッホハマー記号」なんて名前をしてるということは当然qを付ける前の「ポッホハマー記号」もあるというわけですが、こいつは割と有名なもので、
っていうやつです。「階乗冪」とか言ったりしますね。ぼくは「shifted factorial」って言い方がカッコよくて好きです。
q-ポッホハマーを元のポッホハマーに戻すにはちょっとした補正が必要で、だいたいこんな感じです:
んでq-ポッホハマーなんか作って何をするんやという話なのですが、まず「正規積」というものを思い出してください。ぼくが何回かブログに出してたはずです。
その正規積を使って、多重ガンマ はこう書けるのです:
記号の意味は
o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com
を見てください。
さてこいつのq-類似をつくりたいのですが、非常に単純な発想でできます。右辺の積の因子をq-類似にしてやればいいだけです。
さきほど自然数のq-類似を定めましたが、より一般に複素数 に対してもこれのq-類似を として定めることができます。ロピタルの定理を使えばq→1で一致することは示せます。
というわけで、こんなものを作りましょう:
ほんとうは右辺の積の因子に がかかっていないとまずいのですが、この積は上記 と違って正規積ではないので(本当は記号が違うのですが、はてなブログでは正規積記号に対応していませんでした、申し訳ない)、その因子をつけると収束がメンドくなります。
さて、こいつで の場合を考えてみましょう。要するに「一重」のケースですね。なんとこうなります:
そらそうやな。さらに としてみましょう:
右辺は一種のテータ関数みたいなもん(ヤコビ三重積の因子と思ってもらえればわかりやすいかも)なので、テータをガンマ(の一般化)で書けたことになりますね。カッコええやろ。
もちろんq-多重ガンマには面白い成分がいっぱい詰まっておるのですが、今回はこの辺で。