たけのこ赤軍の自由帳

整数論とかNonaReevesとかが好きな中学生のブログ。

三角関数について(その1)

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:


メモリーズ ~ひと夏の記憶~ [LIVE]/NONA REEVES




2017年5月13日に大阪で行われた第6回ロマンティック数学ナイトにおいて私はショートプレゼンを行い、その中で主定理として以下を示しました:


[定理1(レルヒ/1897)]


\displaystyle\begin{eqnarray}\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(m+ni)^4}=\frac{\varpi^4}{15}\end{eqnarray}

プレゼン内でこういうことを話しました。

バーゼル問題とこれって似てない?」

実際似てるんです。バーゼル問題は「自然数2乗逆数和」で、この問題(レルヒの定理と呼びましょう)は「ガウス整数の4乗逆数和」ですからね。

さて、ここでリーマンがかの有名なゼータ関数\zeta(s)を作り出したきっかけを思い出してみましょう。

それは紛れもなくバーゼル問題です。すなわち、リーマンはバーゼル問題の中にあった「自然数2乗の逆数和」を一般化して「自然数s乗の逆数和」とし、それをゼータ関数としたのです:

\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta(s)=\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s}\end{eqnarray}

このとき、私がレルヒだったらこう考えていたでしょう。

「リーマンのやつ、バーゼル問題を一般化してゼータを作ったな。じゃあ、オレだって同じことしてやろうじゃないか」

ということで、以下の関数を定義します:


[定義2]


\displaystyle\begin{eqnarray}G(k)=\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(m+ni)^k}\end{eqnarray}

見るからに面白そうなヤツを作り出してしまいました。しかし、数学者たるものこんなもんでは満足しないのです。アイゼンシュタインはこれをさらに拡張した関数を定めます。



[定義3]


\displaystyle\begin{eqnarray}G_k(z)=\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(mz+n)^k}\end{eqnarray}

これを「アイゼンシュタイン級数」といいます。こいつは非常に奇妙な関数で、何と言っても特徴的なのは「表も裏もゼータである」という点でしょう。

表も裏もゼータ、といってもなんのことかわからないかと思います。そりゃもちろん、私が勝手に考えた言葉ですから。

解析的整数論では割りと有名な事実として、こういうものがあります:


[命題4]


数列a_n\in{\mathbb{C}}に対して、以下のような級数を定める:

\displaystyle\begin{eqnarray}f(z)=\sum_{n=1}^{\infty} a_ne^{2\pi inz}\end{eqnarray}

これがz\in{H}=\{z|\mathrm{Im}(z)>0\}で収束する時、これのメリン変換はa_nゼータ関数L(s)を作り出す:

\displaystyle\begin{eqnarray}F(s)&=&\int_{0}^{\infty} f(iy)y^{s-1}dy\\&=&(2\pi)^{-s}\Gamma(s)L(s)\end{eqnarray}

ここで、

\displaystyle\begin{eqnarray}L(s)=\sum_{n=1}^{\infty} \frac{a_n}{n^s}\end{eqnarray}

これが言っているのは、要するに「数列の母関数をメリン変換したらゼータになるよ」ということです。

命題4ではゼータをだいぶ限定的な書き方(分母がn^sになっている)をしているのですが、実際のところ一般のゼータはこんなに堅苦しい定義ではありません。

分母が自然数s乗ではなく、整係数二次形式のs乗のような形になっている超フリーダムな格好をしたゼータもあります。ここでは詳しく述べませんが、エプシュタインのゼータ関数やヘッケのL関数などがそれですね(実は前記事で述べたRAESはそれの特殊な場合だったり)。


私は普段よく、関数の表や裏といった言い方をします。これはどういうことかというと、母関数を「表側」ゼータを「裏側」という風に呼んでいるのです。

つまり、一般の冪級数\sum_{}^{} a_nx^nx=e^{2\pi iz}を代入してメリン変換することで「裏返って」、たちまちゼータになってしまうわけですね。メリン変換には「逆メリン変換」というのもあるので、ゼータを再び裏返して表向きにすることももちろん可能です。

ここまで言うと、私が先程述べた「表も裏もゼータ」という言葉がはっきりとした輪郭を持ってくるかもしれません。

すなわち、アイゼンシュタイン級数は「母関数」でもあって「ゼータ」でもあるのです。その姿を見てみましょう:


[G_k(z)の表側]


\displaystyle\begin{eqnarray}G_k(z)=2\zeta(k)\left(1-\frac{2k}{B_k}\sum_{n=1}^{\infty} \sigma_{k-1}(n)e^{2\pi inz}\right)\end{eqnarray}


[G_k(z)の裏側]


\displaystyle\begin{eqnarray}G_k(z)=\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(mz+n)^k}\end{eqnarray}


裏側は先程見た定義のとおりですね。集合L_z=\{mz+n|m,n\in{\mathbb{Z}}\}の元のk乗逆数和を渡る和という点がゼータっぽい要素です。

不思議なのは表側の方です。なんと、約数関数とベルヌーイ数を係数にもつ冪級数として書けてしまいました(この事の証明はまた今度の記事でやります)。

これが、「両面ゼータ」ことアイゼンシュタイン級数の美しい姿です。



グレブナー基底大好きbotさん作「最近、妹がグレブナー基底に興味を持ち始めたのだが。」の二話にこんな言葉があります。

「実数は、まだ人類には早すぎる。」

そうなんです。実数なんてもんはめちゃくちゃでかいんです。

だとしたら、実数をさらに押し広げてしまった複素数なんてものはもっともっとでかくて、人類どころか宇宙人にも扱いづらい対象なのではないでしょうか。

しかし、アイゼンシュタイン級数G_k(z)と言うかたちをしています。カッコの中にいる変数はz、即ち複素数です。

こんなものは人類には扱えるはずがありません。ということで、名残惜しいですが限定してしまいましょう。


[定義5]


\displaystyle\begin{eqnarray}C_k(l)=\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(m\zeta_l+n)^k}\end{eqnarray}

ここで、

\zeta_l=\exp\left(\frac{2\pi i}{l}\right)

\zeta_lは所謂「1のl乗根」と呼ばれるやつです。

私たちにとって大きすぎた複素数も、ここまで制限してやるとある程度は扱えるようになります。





さて、ここで少しだけ話題転換。リーマンゼータの特殊値公式を見ていただきたいのです。


[定理6]


\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta(2n)=\frac{(-1)^{n+1}(2\pi)^{2n}}{2(2n)!}B_{2n}\end{eqnarray}

[定理6証明]

まず三角関数の無限積展開

\displaystyle\begin{eqnarray}\sin(x)=x\prod_{n=1}^{\infty} \left(1-\frac{x^2}{\pi^2n^2}\right)\end{eqnarray}

において、\displaystyle x=\frac{u}{2i}を代入します:

\displaystyle\begin{eqnarray}\sin\left(\frac{u}{2i}\right)&=&\frac{u}{2i}\prod_{n=1}^{\infty} \left(1+\frac{u^2}{4\pi^2n^2}\right)\\&=&\frac{u}{2i}\prod_{n=1}^{\infty} \frac{4\pi^2r^2+u^2}{4\pi^2r^2} \tag{1}\end{eqnarray}

ここで、オイラーの公式より\displaystyle\begin{eqnarray}\sin(x)=\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}\end{eqnarray}なので、

\displaystyle\begin{eqnarray}\sin\left(\frac{u}{2i}\right)&=&\frac{e^{i\frac{u}{2i}}-e^{-i\frac{u}{2i}}}{2i}\\&=&\frac{e^{\frac{u}{2}}-e^{-\frac{u}{2}}}{2i}\\&=&\frac{e^{\frac{u}{2}}(1-e^{-u})}{2i} \tag{2}\end{eqnarray}

(1)の対数微分

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{d}{du}\log\left(\frac{u}{2i}\prod_{n=1}^{\infty} \frac{4\pi^2r^2+u^2}{4\pi^2r^2}\right)&=&\frac{d}{du}\left(\log(u)-\log(2i)+\sum_{n=1}^{\infty} \log(4\pi^2r^2+u^2)-\log(4\pi^2r^2)\right)\\&=&\frac{1}{u}+\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2u}{4\pi^2r^2+u^2} \tag{3}\end{eqnarray}

(2)の対数微分もとって、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{d}{dx}\log\left(\frac{e^{\frac{u}{2}}(1-e^{-u})}{2i}\right)&=&\frac{d}{dx}\left(\frac{u}{2}+\log(1-e^{-u})-\log(2i)\right)\\&=&\frac{1}{2}+\frac{(-1)(-1)e^{-u}}{1-e^{-u}}\\&=&\frac{1}{2}+\frac{1}{e^u-1} \tag{4}\end{eqnarray}

(3),(4)はもちろん等しいので、以下等式を得ます:

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{2}+\frac{1}{e^u-1}=\frac{1}{u}+\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2u}{4\pi^2r^2+u^2} \tag{5}\end{eqnarray}

ここで、ベルヌーイ数の定義を思い出しましょう。こうでしたね:

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{u}{e^u-1}=\sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n\end{eqnarray}

最初のほうの値\displaystyle B_0=1, B_1=-\frac{1}{2}を用いてちょっと変形して、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{e^u-1}&=&\frac{1}{u}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n\\&=&\frac{1}{u}\frac{B_0}{0!}u^0+\frac{1}{u}\frac{B_1}{1!}u^1+\frac{1}{u}\sum_{n=2}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n\\&=&\frac{1}{u}-\frac{1}{2}+\frac{1}{u}\sum_{n=2}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n \tag{6}\end{eqnarray}

(6)(5)の左辺に代入すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{2}+\frac{1}{u}-\frac{1}{2}+\frac{1}{u}\sum_{n=2}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n&=&\frac{1}{u}+\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2u}{4\pi^2r^2+u^2}\\ \sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n&=&\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2u^2}{4\pi^2r^2+u^2} \end{eqnarray}

最後の変形では両辺にuをかけていることに注意してください。

そしてこの式を、等比級数の和公式などによって変形していきます。今までも割りと計算が大変でしたが、このパートはさらにめんどくさいので手元に紙とペンがあれば計算を追っていくのをオススメします:

\displaystyle\begin{eqnarray}\sum_{n=2}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \frac{u^2}{4\pi^2n^2+u^2}\\&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \frac{u^2}{4\pi^2n^2\left(1+\left(\frac{u}{2\pi n}\right)^2\right)}\\&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{u}{2\pi n}\right)^2\frac{1}{1+\left(\frac{u}{2\pi n}\right)^2}\\&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{u}{2\pi n}\right)^2\sum_{r=0}^{\infty} (-1)^r\left(\frac{u}{2\pi n}\right)^{2r}\\&=&2\sum_{r=0}^{\infty} (-1)^r\sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{u}{2\pi n}\right)^{2r+2}\\&=&2\sum_{k=1}^{\infty} (-1)^{k+1}\sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{u}{2\pi n}\right)^{2k}\\&=&2\sum_{k=1}^{\infty} (-1)^{k+1}\left(\frac{u}{2\pi}\right)^{2k}\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^{2k}}\\&=&2\sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^{k+1}}{(2\pi)^{2k}}\zeta(2k)u^{2k}\\&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1}}{(2\pi)^{2n}}\zeta(2n)u^{2n}\end{eqnarray}

両辺の係数を比較すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{B_{2n}}{(2n)!}&=&\frac{(-1)^{n+1}}{(2\pi)^{2n}}\zeta(2n)\\ \zeta(2n)&=&\frac{(-1)^{n+1}(2\pi)^{2n}}{2(2n)!}B_{2n}\end{eqnarray}

以上にて結論を得ます。



この定理は\zeta(2n)有理数B_n\piで表現できる、というものです。

さて、ベルヌーイ数は母関数としての定義以外に次のような漸化式を満たすものとしても定められます:


[定義7]


\displaystyle\begin{eqnarray}B_0&=&1\\-(2n+1)B_{2n}&=&\sum_{k=1}^{n-1} \binom{2n}{2k}B_{2k}B_{2n-2k}\end{eqnarray}


そして、唐突ではありますが、次のような数列を導入します:



[定義8]


\displaystyle\begin{eqnarray}e_0&=&-1\\(2n+3)(4n-1)(4n+1)e_{4n}&=&\sum_{k=1}^{n-1} (4k-1)(4n-4k-1)\binom{4n}{4k}e_{4k}e_{4n-4k}\end{eqnarray}

有理数\{e_n\}_{n=0}^{\infty}を定め、これをフルヴィッツ数と呼ぶ。

定義8は、定義7とどことなく似ている気がしませんか?漸化式で定義されているところや、特定の倍数(定義7では2の倍数、定義8では4の倍数)の項以外が存在しないところや、漸化式の和に二項係数が出てきているところなどです。

ここでフルヴィッツ数を導入したのは、「ベルヌーイ数と似ているもの」を作るためです。

定理6で述べられている通り、\zeta(2n)はベルヌーイ数と円周率で作り上げられています。

なので、\zeta(2n)と似たものを作り上げようと思えば、ベルヌーイ数や円周率に似たものを導入する必要があるわけですね。

ベルヌーイ数と似たものを導入すれば、必然的に円周率と似たものも作る必要があります。そのために円周率の定義を見直しましょう。



[定義9]


定数\piは以下のように定義され、円周率と呼ばれる:

\displaystyle\begin{eqnarray}\pi=2\int_{0}^{1} \frac{dx}{\sqrt{1-x^2}}\end{eqnarray}

円周率を、積分を使って定義しています。図形的な視点からも、この定義が一番自然ですね。

そして、円周率と似た定数をまた積分で定義します。


[定義10]


定数\varpiは以下のように定義され、レムニスケート周率と呼ばれる:

\displaystyle\begin{eqnarray}\varpi=2\int_{0}^{1} \frac{dx}{\sqrt{1-x^4}}\end{eqnarray}


レムニスケート周率という名前は、文字通り「レムニスケート」という図形の周長の半分であることからきています。

円周率が円の周長の半分であることからもわかりますね。


さて、こうして私たちはベルヌーイ数と円周率にそれぞれ似ているものを作り出しました。これらを用いて、ようやく次の定理を述べることが出来ます。

[定理11]


\displaystyle\begin{eqnarray}C_{4n}(4)=\frac{(2\varpi)^4}{(4n)!}e_{4n}\end{eqnarray}

定理6とやはり似ていますね。違う点は以下の通り:


(1)定理6の分母には2があったのに、定理11の分母は階乗だけになっている
(2)定理6の分子には符号の補正があったのに、定理11にはない



相違点(1)の原因は、リーマンゼータ関数が「整数」ではなく「自然数」を渡っている点にあります。

もしリーマンが、

\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta(s)=\sum_{n=-\infty\atop{n\neq{0}}}^{\infty} \frac{1}{n^s}\end{eqnarray}

と定義していれば、定理6の右辺の分母に2が現れることはなくなって定理11と揃ってくれます。

相違点(2)については、かなり複雑な要因が絡み合った結果生まれた相違点なので今後の記事に回すことにします。ごめんなさい。


では、定理11の証明をしていきましょう...といいたいところですが、そのためにはまだ一人足りないメンバーがいます。というわけで呼びました。

[定義12]


\displaystyle\begin{eqnarray}\wp(z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{(z-l)^2}-\frac{1}{z^2}\end{eqnarray}

ただし、ここでLは二つの複素数\omega_1,\omega_2によって決まる集合

\displaystyle\begin{eqnarray}L=\{m\omega_1+n\omega_2|m,n\in{\mathbb{Z}}\}\end{eqnarray}

である。

Lは一般的に「格子」なんて言われる集合ですが、私はこの名称が(なんかダサいから)嫌いなので英名のlatticeと呼ぶことにします。

そして、関数\wp(z)はいわゆるワイエルシュトラスの楕円関数ですね。この記事タイトルが「三角関数について」である理由は、この楕円関数と三角関数の著しい類似を示すことが主目的だからです(といっても、この記事でその類似が明らかになるのは定理11だけですが...)。

\wp(z)を扱いやすいように変形するためには、まず等比級数の公式をつかいます。

\displaystyle\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+x^3+\cdots

ですね。次に、この両辺を微分します。

\displaystyle\frac{1}{(1-x)^2}=1+2x+3x^2+4x^3+\cdots

x=\frac{z}{l}を代入すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{(1-\frac{z}{l})^2}=1+2\frac{z}{l}+3\frac{z^2}{l^2}+4\frac{z^3}{l^3}\cdots\tag{7}\end{eqnarray}

となるので、両辺から1を引いて\displaystyle\frac{1}{l^2}を掛けると

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{(l-z)^2}-\frac{1}{l^2}=2\frac{z}{l^3}+3\frac{z^2}{l^5}+4\frac{z^3}{l^6}\cdots\end{eqnarray}

となります。これを定義12にある式に代入すると、以下を得ます:

\displaystyle\begin{eqnarray}\wp(z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} 2\frac{z}{l^3}+3\frac{z^2}{l^5}+4\frac{z^3}{l^6}\cdots\tag{8}\end{eqnarray}

(7)でうまく収束するように小さくzをとったとき、式(8)の二重級数はともに絶対一様収束するので和を交換でき、

\displaystyle\begin{eqnarray}\wp(z)&=&\frac{1}{z^2}+\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \sum_{n=1}^{\infty} (n+1)\frac{z^n}{l^{n+2}}\\&=&\frac{1}{z^2}+\sum_{n=1}^{\infty} \sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} (n+1)\frac{z^n}{l^{n+2}}\\&=&\sum_{n=1}^{\infty} (n+1)G_{n+2}z^n\end{eqnarray}

とできます。ここで、

\displaystyle\begin{eqnarray}G_n(L)=\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{l^n}\end{eqnarray}

と置いています。関数G_n(L)n,\omega_1,\omega_2によって決まっていることに注意して下さい。

\omega_1=1,\omega_2=iとおくと、

\displaystyle\begin{eqnarray}G_k(L)&=&\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{l^k}\\&=&\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(m+ni)^k}\end{eqnarray}

奇数2n+1に対し、

\displaystyle\begin{eqnarray}G_{2n+1}(L)&=&\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{l^{2n+1}}\\&=&\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{(-l)^{2n+1}}\\&=&-\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{l^{2n+1}}\\&=&-G_{2n+1}(L)\end{eqnarray}

ゆえにG_{2n+1}(L)=0となるため、\wp(z)の展開は偶数項だけを渡る和となります:

\displaystyle\begin{eqnarray}\wp(z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{n=1}^{\infty} (2n+1)G_{2n+2}(L)z^{2n}\end{eqnarray}

これである程度は扱いやすい形になったのではないでしょうか。

とりあえず、長くなるので今回の記事はここまでとしておきます。次回では、導いた\wp(z)の展開と微分方程式を利用して定理11を示す予定です。

クロネッカーの極限公式

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:


NONA REEVES 地球儀と野鼠



前回の記事

o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com

で解説した定理2、RAES(実解析的アイゼンシュタイン級数)のフーリエ展開を使うときが再びやってまいりました。

続きものなので、前回の記事を読んでいない方は先に読むことをおすすめします。



[クロネッカーの極限公式]

q=e^{2\pi iz}として関数

\displaystyle\Delta(z)=q\prod_{n=1}^{\infty} (1-q^m)^{24}

を定める。このとき、

\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)=\frac{1}{6}\log\left(y^6|\Delta(z)|\right)

\Delta(z)ラマヌジャンが発見した関数の一種で、いわゆる保型形式というやつです(その中でも正則な部類に入る)。

これは今まで学んだ数学の中で僕が一番好きな関数なので、今後幾つか関連記事を書こうと思います。


[証明]


予告した通りRAESの展開を使うのですが、すこし変形しておきます。

まず第二項の分子にある\hat{\zeta}(2s-1)を関数等式によってこう変形します:

\displaystyle\begin{eqnarray}\hat{\zeta}(2s-1)&=&\hat{\zeta}\left(1-(2s-1)\right)\\&=&{\pi}^{-\frac{2-2s}{2}}\Gamma\left(\frac{2-2s}{2}\right)\zeta(2-2s)\\&=&\pi^{s-1}\Gamma(1-s)\zeta(2-2s)\end{eqnarray}

分母にある\hat{\zeta}(2s)は定義どおりにそのまま展開すると、以下のようになりました:

\displaystyle E(s,z)=y^s+\frac{\pi^{s-1}\Gamma(1-s)\zeta(2-2s)}{\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)}y^{1-s}\displaystyle +\frac{4}{\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)}\sum_{m=1}^{\infty} m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

これにちょっと細工をしてやることで\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)を求めていくのですが、その前にちょっとだけ準備をしましょう。

まず、ガンマ関数のローラン展開について考えます。この関数は-n(n\in\mathbb{N})1位の極を持つ以外に極はないので、ローラン展開の負部分はs^{-1}の項で打ち止めですね。

つまり、こう書けるわけです:

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{\Gamma(s)}&=&\frac{1}{\frac{1}{s}+O(1)}\\&=&\frac{s}{1+O(s)}=s+O(s^2)\end{eqnarray}

ここでO(s^n)は「s^n以上の項」のような意味です。

さて、これを用いることでいい感じの関数f(s)に対して以下のようなことができます:

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{f(s)}{\Gamma(s)}&=&\left(f(0)+O(s)\right)\left(s+O(s^2)\right)\\&=&f(0)s+O(s^2)\end{eqnarray}

これを、\displaystyle f(s)=\frac{\pi^{s-1}\Gamma(1-s)\zeta(2-2s)}{\pi^{-s}\zeta(2s)}\displaystyle\frac{4}{\pi^{-s}\zeta(2s)}に対して適用すると

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{\pi^{s-1}\Gamma(1-s)\zeta(2-2s)}{\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)}&=&\frac{\pi^{-1}\Gamma(1)\zeta(2)}{\pi^{-0}\zeta(0)}s+O(s^2)\\&=&-\frac{\pi}{3}s+O(s^2)\\ \frac{4}{\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)}&=&\frac{4}{\pi^{-0}\zeta(0)}s+O(s^2)\\&=&-8s+O(s^2)\end{eqnarray}

より、E(0,z)=1が従います。また、

\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)=\log{y}-\frac{\pi}{3}y-8\sum_{m=1}^{\infty} m^{-\frac{1}{2}}\sigma_{1}(m)\sqrt{y}K_{-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

もすぐにわかりますね。\sigma_1(m)はわざわざ添え字を書くのもアホらしいので\sigma(m)としておきましょう。

そして、式中には\displaystyle K_{-\frac{1}{2}}(2\pi my)なんてのが出てきていますが、前回の記事・定理3で

K_s(z)=K_{-s}(z)

を示しているので、一般に

\displaystyle K_{\frac{1}{2}}(z)

の計算方法がわかればこれも計算できます。では調べてみましょう。

\displaystyle K_{\frac{1}{2}}(z)=\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{-\frac{1}{2}}du

において、\displaystyle v=\frac{z}{2}uというふうに変数を変換します。すると、

\displaystyle\frac{du}{dv}=\frac{2}{z}

なので、

\displaystyle\begin{eqnarray}u^{-\frac{1}{2}}du&=&\left(\frac{2v}{z}\right)^{-\frac{1}{2}}\frac{2}{z}dv\\&=&v^{-\frac{1}{2}}\sqrt{\frac{2}{z}}dv\end{eqnarray}

ということに注目すると

\displaystyle\begin{eqnarray}K_{\frac{1}{2}}(z)&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{-\frac{1}{2}}du\\&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\frac{z}{2}\left(\frac{2v}{z}+\frac{z}{2v}\right)\right)v^{-\frac{1}{2}}dv\sqrt{\frac{2}{z}}\\&=&\frac{1}{\sqrt{2z}}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\left(v+\frac{z^2}{4v}\right)\right)v^{-\frac{1}{2}}dv\\ \frac{d}{dz}\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)&=&\int_{0}^{\infty} \left(-\frac{z}{2v}\right)\exp\left(-\left(v+\frac{z^2}{4v}\right)\right)v^{-\frac{1}{2}}dv\\&=&-\frac{z}{2}\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\left(v+\frac{z^2}{4v}\right)\right)v^{-\frac{3}{2}}dv\end{eqnarray}

ここで、再び変数変換\displaystyle w=\frac{z^2}{4v}を行います。今度は、

\displaystyle\frac{dv}{dw}=-\frac{z^2}{4w^2}

なので、

\displaystyle\begin{eqnarray}v^{-\frac{3}{2}}dv&=&-\left(\frac{z^2}{4w}\right)^{-\frac{3}{2}}\frac{z^2}{4w^2}dw\\&=&-w^{-\frac{1}{2}}\frac{2}{z}dw\end{eqnarray}

より(この変数変換で一度積分範囲が上下逆に入れ替わってることに注意してください)、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{d}{dz}\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)&=&-\frac{z}{2}\int_{\infty}^{0} \exp\left(-\left(w+\frac{z^2}{4w}\right)\right)w^{-\frac{1}{2}}\left(-\frac{2}{z}\right)dw\\&=&\int_{\infty}^{0} \exp\left(-\left(w+\frac{z^2}{4w}\right)\right)w^{-\frac{1}{2}}dw\\&=&\int_{0}^{\infty} \exp\left(-\left(w+\frac{z^2}{4w}\right)\right)w^{-\frac{1}{2}}dw\\&=&-\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)\end{eqnarray}

となって、関数\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)は簡単な微分方程式

f'(z)=-f(z)

を満たすことがわかりました。これの解は、Cを定数として

\displaystyle\begin{eqnarray}f(z)&=&Ce^{-z}\\&=&\sqrt{2z}K_{\frac{1}{2}}(z)\end{eqnarray}

とされます。z=0とすることで、

\displaystyle\begin{eqnarray}f(0)&=&C\\&=&\int_{0}^{\infty} e^{-v}v^{-\frac{1}{2}}dv\\&=&\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)\\&=&\sqrt{\pi}\end{eqnarray}

より、

\displaystyle K_{\frac{1}{2}}(z)=\sqrt{\frac{\pi}{2z}}e^{-z}

が得られました。

これを先程導いた\displaystyle \frac{\partial}{\partial s}E(0,z)の表示式に代入すると

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)&=&\log{y}-\frac{\pi}{3}y-8\sum_{m=1}^{\infty} m^{-\frac{1}{2}}\sigma(m)\sqrt{y}K_{-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)\\&=&\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)\\&=&\log{y}-\frac{\pi}{3}y-8\sum_{m=1}^{\infty} m^{-\frac{1}{2}}\sigma(m)\sqrt{y}\sqrt{\frac{1}{4my}}e^{-2\pi my}\cos(2\pi mx)\\&=&\log{y}-\frac{\pi}{3}y-4\sum_{m=1}^{\infty} \frac{\sigma(m)}{m}e^{-2\pi my}\cos(2\pi mx)\end{eqnarray}

これで定理左辺の計算は終わったので、右辺の計算に移行しましょう:

\displaystyle\begin{eqnarray}\log(y^6|\Delta(z)|)&=&6\log{y}+\log|\Delta(z)|\\&=&6\log{y}+\mathrm{Re}\left(\log\Delta(z)\right)\\&=&6\log{y}+\mathrm{Re}\left(\log\left(e^{2\pi iz}\prod_{n=1}^{\infty} (1-e^{2\pi imz})^{24}\right)\right)\\&=&6\log{y}+\mathrm{Re}\left(2\pi i(x+iy)+24\sum_{n=1}^{\infty} \log(1-e^{2\pi imz})\right)\\&=&6\log{y}-2\pi y-24\mathrm{Re}\left(\sum_{n=1}^{\infty} \sum_{m=1}^{\infty}\frac{e^{2\pi imnz}}{m}\right)\end{eqnarray}

実部の計算は面倒なのでそこだけ抜き出して行うと、

\displaystyle\begin{eqnarray}\mathrm{Re}(e^{2\pi imnz})&=&\mathrm{Re}(e^{2\pi imnx-2\pi mny})\\&=&\mathrm{Re}(\cos(2\pi mnx)+i\sin(2\pi mnx))e^{-2\pi mny}\\&=&e^{-2\pi mny}\cos(2\pi mnx)\end{eqnarray}

となるので、

\displaystyle\begin{eqnarray}\log(y^6|\Delta(z)|)&=&6\log{y}-2\pi y-24\sum_{n=1}^{\infty} \sum_{m=1}^{\infty} \frac{1}{m}e^{-2\pi mny}\cos(2\pi mnx)\\&=&6\log{y}-2\pi y-24\sum_{l=1}^{\infty} \frac{\sigma(l)}{l}e^{-2\pi ly}\cos(2\pi lx)\end{eqnarray}

がわかります。最後の変形では、シグマの変数mnを新しい変数lに改めています。

これを\displaystyle\frac{1}{6}倍してシグマの変数をlからmに差し替えることで、

\displaystyle \frac{1}{6}\log(y^6|\Delta(z)|)=\log{y}-\frac{\pi}{3}y-4\sum_{m=1}^{\infty} \frac{\sigma(m)}{m}e^{-2\pi my}\cos(2\pi mx)

となって、定理左辺と一致しました。これにてクロネッカーの極限公式、証明終了です。



しかし、どこか物足りない感じがしますね。

定理左辺の\displaystyle \frac{\partial}{\partial s}E(0,z)、これはRAESをs微分して0を代入することを表しています。

しかもRAESの定義において、変数sはシグマ内部をまるごとs乗するというところに現れています。

となると、正規積に関連付けたくなりますね。実際、そういった言い換えが存在します:




[クロネッカーの極限公式・正規積バージョン]

\displaystyle\prod_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \frac{|mz+n|}{\sqrt{y}}=2\pi\left(y^6|\Delta(z)|\right)^{\frac{1}{12}}


[証明]

正規積の定義(以下記事参照)より、
o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com

\displaystyle a_{m,n}=\frac{|mz+n|}{\sqrt{y}}

としておきます。数列のゼータは「もとの数列を-s乗してシグマに入れる」が定義でしたから、こうなります:

\displaystyle \zeta_{\mathrm{K}}(s)=\sum_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \left(\frac{|mz+n|}{\sqrt{y}}\right)^{-s}

ここのゼータの右下にくっついてる\mathrm{K}クロネッカー(Kronecker)の\mathrm{K}です。デデキントゼータじゃないので代数体とかのKとかではありません(岩波書店の数論2という本ではこのゼータは\zeta_{\mathrm{K}}(s)ではなく\varphi_2(s)として表記されていますがなんかダサいのでやめました)。

ではコイツの計算をしていきましょう:

\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta_{\mathrm{K}}(s)&=&\sum_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \left(\frac{\sqrt{y}}{|mz+n|}\right)^{s}\\&=&y^{\frac{s}{2}}\sum_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \frac{1}{|mz+n|^s}\\&=&2\times\frac{1}{2}y^{\frac{s}{2}}\sum_{l=1}^{\infty} \sum_{(c,d)=1}^{} \frac{1}{|lcz+ld|^s}\\&=&2\times\frac{1}{2}y^{\frac{s}{2}}\sum_{l=1}^{\infty} l^{-s}\sum_{(c,d)=1}^{} \frac{1}{|cz+d|^s}\\&=&2\zeta(s)E(s,z)\end{eqnarray}

なので、微分して0を代入することで

\displaystyle\begin{eqnarray}\left.\frac{\partial}{\partial s}\zeta_{\mathrm{K}}(s)\right|_{s=0}&=&\left.2\zeta'(s)E\left(\frac{s}{2},z\right)+2\zeta(s)\frac{\partial}{\partial s}E\left(\frac{s}{2},z\right)\right|_{s=0}\\&=&-\log(2\pi)-\frac{1}{2}\frac{\partial}{\partial s}E(0,z)\end{eqnarray}

です。ただし、\displaystyle \zeta'(0)=-\frac{1}{2}\log(2\pi)E(0,z)=1を使っています。

前者は記事「等差数列の無限積」で示した定理でa=1,b=1とした結果の対数を取ってマイナスを付けることで得られ、後者は記事「実解析的アイゼンシュタイン級数」で記載しました。

すると残った計算は\displaystyle \frac{\partial}{\partial s}E(0,z)だけになりますが、これはそのままクロネッカーの極限公式を使えば良いですね。

したがって、

\displaystyle\begin{eqnarray}\left.\frac{\partial}{\partial s}\zeta_{\mathrm{K}}(s)\right|_{s=0}&=&-\log(2\pi)-\frac{1}{12}\log\left(y^6|\Delta(z)|\right)\\&=&-\log(2\pi)\end{eqnarray}

です。これにマイナスを付けて指数関数に入れれば、

\displaystyle\begin{eqnarray}\exp\left(-\zeta_{\mathrm{K}}'(0)\right)&=&\prod_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \frac{|mz+n|}{\sqrt{y}}\\&=&2\pi(y^6|\Delta(z)|)^{\frac{1}{12}}\end{eqnarray}

となって定理が示されました。



クロネッカーの極限公式、以上で終了です。

次回記事では、これを利用していくつかの無限積の特殊値などを求めていこうと予定しています。お楽しみに。

実解析的アイゼンシュタイン級数

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:



「実解析的アイゼンシュタイン級数


このおなまえを聞いて、ピンとくる人はどれくらいいるでしょうか。

Wikipediaには記事がありますが、特殊関数の中で有名な方ではありません。

しかしコイツは、自身が持つ強烈なフーリエ展開を背景とした素数定理の別証明を与えられるほど強い性質を持っています。

今回はその性質の一部を紹介したいと思います(今後この長ったらしい名前を呼ぶのはかったるいのでReal Analytic Eisenstein Seriesの頭文字からRAESと呼びます)。



<定義>


\mathrm{Im}(z)>0,\mathrm{Re}(s)>1に対して

\displaystyle E(s,z)=\frac{1}{2}y^s\sum_{(c,d)=1}^{} |cz+d|^{-2s}

とする。ただし、z=x+yiである。



まぁ定義だけ見せられてもなんのこっちゃかわからないと思うので、基本的性質を示していきましょう。



[定理1]


\left(\begin{array}{ccc} a & b\\ c & d\end{array}\right)\in SL(2,\mathbb{Z})に対して、

\displaystyle E\left(s,\frac{az+b}{cz+d}\right)=E(s,z)

[証明]


これを示すには、\displaystyle E(s,z+1)=E(s,-\frac{1}{z})=E(s,z)を示せば十分です。

なぜなら、\left(\begin{array}{ccc} 1 & 1\\ 0 & 1\end{array}\right)\left(\begin{array}{ccc} 0 & -1\\ 1 & 0\end{array}\right)SL(2,\mathbb{Z})の生成元だからです。前者は

\displaystyle\begin{eqnarray}E(s,z+1)&=&\frac{1}{2}y^s\sum_{(c,d)=1}^{} |cz+(c+d)|^{-2s}\\&=&E(s,z)\end{eqnarray}

とすぐに確かめられますね。

c,dが互いに素ならばc,c+dも互いに素ということは既知とします。後者のほうは、

\displaystyle E(s,-\frac{1}{z})=\frac{1}{2}\sum_{(c,d)=1}^{} \frac{\mathrm{Im}\left(-\frac{1}{z}\right)^s}{|-\frac{c}{z}+d|^{2s}}

ですが、

\displaystyle\begin{eqnarray}\mathrm{Im}\left(-\frac{1}{z}\right)&=&\mathrm{Im}\left(-\frac{\bar{z}}{z\bar{z}}\right)\\&=&-\frac{\mathrm{Im}(\bar{z})}{|z|^2}\\&=&\frac{\mathrm{Im}(z)}{|z|^2}\end{eqnarray}

を用いると

\displaystyle\begin{eqnarray}E\left(s,-\frac{1}{z}\right)&=&\frac{1}{2}\sum_{(c,d)=1}^{}\frac{y^s}{|dz-c|^{2s}}\\&=&E(s,z)\end{eqnarray}

となります。これで第二変数zSL(2,\mathbb{Z})の元に対する不変性(これを保型形式の保型性と言ったりします)が示されました。



[定理2]


\displaystyle E(s,z)=y^s+\frac{\hat{\zeta}(2s-1)}{\hat{\zeta}(2s)}y^{1-s}\displaystyle +\frac{4}{\hat{\zeta}(2s)}\sum_{m=1}^{\infty} m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

ただし、

\displaystyle\begin{eqnarray}\hat{\zeta}(s)&=&\pi^{-\frac{s}{2}}\Gamma\left(\frac{s}{2}\right)\zeta(s)\\ \sigma_s(m)&=&\sum_{d|m}^{} d^s\\ K_s(z)&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{s-1}du\end{eqnarray}


いやぁ、強烈ですね。

これが最初に述べたRAESのフーリエ展開です。定理1で周期1をもつことを示しているから可能ということですね。

フーリエ展開は\displaystyle \sum_{m=-\infty}^{\infty} a_me^{2\pi imz}の形をしてるのが普通だろ!いい加減にしろ!」なんてお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、この場合は初めの二項が今言った式でのm=0、つまり「定数項」にあたります。そして、第三項の級数の部分がm\neq0の部分です。


[証明]


変数zが周期を持つのでフーリエ展開できる、ということでしたが、周期は(x+yi)+1\rightarrow (x+yi)なので実質xが周期を持つことになります。

よってこう書くことができます:

E(s,z)=\displaystyle\sum_{m=-\infty}^{\infty} a_m(y)e^{2\pi imx}

このフーリエ係数は、展開の定義より

\displaystyle a_m(y)=\int_{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}} E_(s,x+iy)e^{-2\pi imx}dx

と書けます。

これを計算するわけですが、めんどくさいのでちょっと楽な方法を使いましょう。

まず、完備RAESを定義します。

\hat{E}(s,z)=\hat{\zeta}(2s)E(s,z)

完備リーマンゼータ\hat{\zeta}の定義はさきほど述べましたね。これを次のように分割してしまいます:

\displaystyle\begin{eqnarray}\hat{E}(s,z)&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)\frac{1}{2}\sum_{(c,d)=1}^{} \frac{y^s}{|cz+d|^{2s}}\\&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\frac{1}{2}\sum_{l=1}^{\infty} l^{-2s}\sum_{(c,d)=1}^{} \frac{y^s}{|cz+d|^{2s}}\\&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\frac{1}{2}\sum_{l=1}^{\infty} \sum_{(c,d)=1}^{} \frac{y^s}{|lcz+ld|^{2s}}\\&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\frac{1}{2}\sum_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \frac{y^s}{|mz+n|^{2s}}\\&=&(m=0の項)+(m\neq0の項)\end{eqnarray}

ただし、下から二行目のシグマの下についているダッシュ記号は「m,nがともに0であることはない」という意味です。

ここで、

\displaystyle\begin{eqnarray}(m=0の項)&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\frac{1}{2}\sum_{(n=-\infty)'}^{\infty}\frac{y^s}{|n|^{2s}}\\&=&\pi^{-s}\Gamma(s)y^s\sum_{n=1}^{\infty} n^{-2s}\\&=&y^s\hat{\zeta}(2s)\end{eqnarray}

となります。

まぁこれを仮に等式Aとでもしておきましょう。

\displaystyle\begin{eqnarray}|mz+n|^{2s}&=&\left(\sqrt{\mathrm{Re}(mz+n)^2+\mathrm{Im}(mz+n)^2}\right)^2\\&=&\mathrm{Re}(m(x+iy)+n)^2+\mathrm{Im}(m(x+iy)+n)^2\\&=&(mx+n)^2+(my)^2\end{eqnarray}

に注意すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}(m\neq0の項)&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \frac{y^s}{|mz+n|^{-2s}}\\&=&\pi^{-s}y^s\Gamma(s)\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \left((mx+n)^2+(my)^2\right)^{-s}\end{eqnarray}

がわかります。

ここで、a>0にたいして

\displaystyle a^{-s}\Gamma(s)=\int_{0}^{\infty} e^{-au}u^{s-1}du

が成立すること(証明は略、au=tのような変数変換をすることで簡単に示せます)を用いると、

\displaystyle (m\neq0の項)=y^s\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \int_{0}^{\infty} e^{-\pi((mx+n)^2+(my)^2)u}u^{s-1}du

となります。

さらに、ポアソン和公式から導かれる定理

\displaystyle\sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{-\pi(mx+n)^2u}=\frac{1}{\sqrt{u}}\sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{2\pi imnx-\frac{\pi n^2}{u}}

を使って(証明はまた今度、ポアソン和公式の紹介も兼ねて新しい記事を書きます)、

\displaystyle\begin{eqnarray}(m\neq0の項)&=&y^s\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \left(\int_{0}^{\infty} e^{-\left(\pi m^2y^2u+\frac{\pi n^2}{u}\right)}u^{s-\frac{3}{2}}du\right)e^{2\pi imnx}\\&=&y^s\sum_{m=1}^{\infty} \int_{0}^{\infty} e^{-\pi m^2y^2u}u^{s-\frac{3}{2}}du+2y^s\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=1}^{\infty} \left(\int_{0}^{\infty} e^{-\left(\pi m^2y^2u+\frac{\pi n^2}{u}\right)}u^{s-\frac{3}{2}}du\right)\cos(2\pi mnx)\end{eqnarray}

がわかりますね。

このうちの前の項は、

\displaystyle\begin{eqnarray}y^s\sum_{m=1}^{\infty} \left(\int_{0}^{\infty} e^{-\pi m^2y^2u}u^{s-\frac{3}{2}}du\right)&=&y^s\sum_{m=1}^{\infty} (\pi m^2y^2)^{-\left(s-\frac{1}{2}\right)}\Gamma\left(s-\frac{1}{2}\right)\\&=&y^{1-s}\Gamma\left(s-\frac{1}{2}\right)\sum_{m=1}^{\infty} \pi^{-\left(s-\frac{1}{2}\right)}m^{1-2s}y^{1-s}\\&=&\pi^{-\left(s-\frac{1}{2}\right)}\Gamma\left(s-\frac{1}{2}\right)\zeta(2s-1)\\&=&y^{1-s}\hat{\zeta}(2s-1)\end{eqnarray}

となり、後ろの項は積分の変数を\displaystyle v=\frac{my}{n}uとすることで

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{du}{dv}&=&\frac{n}{my}\\ \pi m^2y^2u+\frac{\pi n^2}{u}&=&\pi mny\left(\frac{myu}{n}+\frac{n}{myu}\right)=\pi mny\left(v+\frac{1}{v}\right)\end{eqnarray}

であることから

\displaystyle\begin{eqnarray}\int_{0}^{\infty} e^{-\left(\pi m^2y^2u+\frac{\pi n^2}{u}\right)}u^{s-\frac{3}{2}}du&=&\int_{0}^{\infty} e^{-\pi mny\left(v+\frac{1}{v}\right)}v^{s-\frac{3}{2}}dv\times \left(\frac{n}{my}\right)^{s-\frac{1}{2}}\\&=&\left(\frac{n}{my}\right)^{s-\frac{1}{2}}\times{2}\times K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi mny)\end{eqnarray}

を導けます。

こうして得た前の項、後ろの項を足すと、

\displaystyle\begin{eqnarray}(m\neq0の項)&=&\hat{\zeta}(1-s)y^{1-s}+2y^s\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{n}{my}\right)^{s-\frac{1}{2}}\times 2 \times K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi mny)\cos(2\pi mnx)\\&=&\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}+4y^s\left(\frac{1}{y}\right)^{s-\frac{1}{2}}\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=1}^{\infty} n^{s-\frac{1}{2}}m^{\frac{1}{2}-s}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi mny)\cos(2\pi mnx)\\&=&\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}+4\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=1}^{\infty} (mn)^{s-\frac{1}{2}}m^{1-2s}\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi mny)\cos(2\pi mnx)\\&=&\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}+4\sum_{l=1}^{\infty} l^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(l)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi ly)\cos(2\pi lx)\end{eqnarray}

となります。

ただし、最後の変形ではmnをあらたにlという変数に置き換えることでシグマを一つ減らす手法を取っています。これと等式Aをまとめると、

\displaystyle \hat{E}(s,z)=\hat{\zeta}(2s)y^s+\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}\displaystyle +4\sum_{l=1}^{\infty} l^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(l)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

なので、両辺を\hat{\zeta}(2s)で割ってシグマの変数をlからmに差し替えることで

\displaystyle E(s,z)=y^s+\frac{\hat{\zeta}(2s-1)}{\hat{\zeta}(2s)}y^{1-s}\displaystyle +\frac{4}{\hat{\zeta}(2s)}\sum_{m=1}^{\infty} m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

が得られます。これで定理2の証明が終了です。


でもこの記事はこれだけでは終わりません。

たしかに定理としてのインパクトはこのフーリエ展開が一番ですが、この結果を使った非常に美しい等式があります。そちらがメインです:




[定理3]


\hat{E}(s,z)=\hat{E}(1-s,z)


<証明>

\displaystyle \hat{E}(s,z)=\hat{\zeta}(2s)y^s+\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}\displaystyle +4\sum_{m=0}^{\infty} m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

より

\displaystyle \hat{E}(1-s,z)=\hat{\zeta}(2-2s)y^{1-s}+\hat{\zeta}(1-2s)y^s\displaystyle +4\sum_{m=0}^{\infty} m^{\frac{1}{2}-s}\sigma_{2s-1}(m)\sqrt{y}K_{\frac{1}{2}-s}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

となります。

そこで、有名な関数等式\hat{\zeta}(s)=\hat{\zeta}(1-s)を使えば

\displaystyle\begin{eqnarray}\hat{\zeta}(2-2s)y^{1-s}+\hat{\zeta}(1-2s)y^s&=&\hat{\zeta}\left(1-(2-2s)\right)y^{1-s}+\hat{\zeta}\left(1-(1-2s)\right)y^s\\&=&\hat{\zeta}(2s)y^s+\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}\end{eqnarray}

となって、\hat{E}(s,z)\hat{E}(1-s,z)の第一項と第二項が等しいことがわかります。第三項が等しいことを示すには、

(1) \displaystyle m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)=m^{\frac{1}{2}-s}\sigma_{2s-1}(m)

(2) \displaystyle K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)=K_{\frac{1}{2}-s}(2\pi my)

をいえばよいですね。

ここは思い切って一般化してしまって、

(1)' \sigma_t(m)=m^t\sigma_{-t}(m)

(2)' K_s(z)=K_{-s}(z)

を示すことにしましょう。


[(1)'証明]


\displaystyle\begin{eqnarray}\sigma_t(m)&=&\sum_{d|m}^{} d^t\\&=&\sum_{d|m}^{} \left(\frac{m}{d}\right)^t\\&=&m^t\sum_{d|m}^{} d^{-t}\\&=&m^t\sigma_{-t}(m)\end{eqnarray}


[(2)'証明]


定義より

\displaystyle K_{-s}(z)=\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{-s-1}du

ですが、ここで変数変換\displaystyle t=\frac{1}{u}を施します。すると、

\displaystyle\begin{eqnarray} K_{-s}(z)&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{-s-1}du&=&\frac{1}{2}\int_{\infty}^{0}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(\frac{1}{t}+t\right)\right)t^{s+1}\left(-t^{-2}\right)dt\\&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(t+\frac{1}{t}\right)\right)t^{s-1}dt\end{eqnarray}

となり、証明されます。

以上より、定理3の証明も終了です。



本記事では記載しませんでしたが、RAESにはもう一つ重要な性質として「ラプラシアンに対する固有関数である」というものがあります。

この性質と、定理1をあわせた性質を持つ関数として、「マースの波動形式」というものが定義されます(厳密にはフーリエ係数の評価も要求される)。

これはうまい具合にRAESの一般化となっていて、実は「ラプラシアンに対する固有関数である」ということから定理2のフーリエ展開が波動形式においても導けることがわかります。

一般の波動形式に対するリーマン予想とも呼べるような未解決問題「セルバーグの\displaystyle\frac{1}{4}予想」というものがあるのですが、これについても今後記事を書く予定です。

等差数列の無限積

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:



こんにちは。たけのこ赤軍です。

2017年4月1日に行われたイベント「ロマンティック数学ナイト ボーイズ」に参加したのですが、それの終了後に行われた懇親会にて鯵坂もっちょ氏より「発見したことをまとめるブログをやってみてはどうか」というお話を受け、このようなブログを開設いたしました。よろしくお願いします。

本記事では、タイトルにある「等差数列の無限積」について紹介したいと思います。

等差数列というと、隣り合う項の差が一定な数列として定義される数列のことを指します。一般項は、a_n=an+b(a,b\in\mathbb{C})で与えられます。

この一般項の式において、「公差」と呼ばれるものが{a}で「初項」が{b}にあたります。

つまり、「等差数列の無限積」というのは以下のような積を指すわけです:

b(a+b)(2a+b)(3a+b)\cdots

ただ、これを真面目に計算してもほとんどの場合発散してしまうことがすぐにわかります。たとえば、a=2,b=1でやってみると積は

1(2+1)(4+1)(6+1)\cdots=1\times{3}\times{5}\times{7}\cdots

と、すべての奇数の積になります。これは当然発散です。

しかし、実はこのような発散する積に対しても、一つの意味ある値を与えるための手続きが存在します。

それが「正規積」と呼ばれるものです。その定義は以下:

数列A:={a_\lambda}(\lambda\in{\Lambda})に対して、Aゼータ関数

\displaystyle\zeta_A(s):=\sum_{\lambda\in{\Lambda}}^{} \frac{1}{(a_\lambda)^s}

と定める(s\in\mathbb{C})

このとき、Aの正規積は

\displaystyle\prod_{\lambda\in{\Lambda}}^{} a_\lambda=\exp\left(-\frac{d}{ds}\zeta_A(0)\right)

で与えられる。

最後の\displaystyle\frac{d}{ds}\zeta_A(0)は、s微分してからs=0を代入することを表しています。

何故このような定義なのかということですが、これは実際に\zeta_A(s)微分して0を代入してみるとすぐにわかります(ここでは割愛)。

では、この定義を使って早速a_n=an+bの正規積を計算していきましょう。

このとき、等差数列のゼータ関数\zeta_{a,b}(s)は次のようになります:

\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta_{a,b}(s)&=&\sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{(an+b)^s}\\&=&\frac{1}{a^s}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{\left(n+\frac{b}{a}\right)^s}\\&=&a^{-s}\zeta\left(s,\frac{b}{a}\right)\end{eqnarray}

ここで、\zeta(s,x)はフルヴィッツゼータ関数です(定義はWikipediaを参照)。

\displaystyle a^{-s}\zeta\left(s,\frac{b}{a}\right)微分するには、積の微分法を使えば良いですね。

\displaystyle \frac{\partial}{\partial s}a^{-s}\zeta\left(s,\frac{b}{a}\right)=a^{-s}\left(\frac{\partial}{\partial s}\zeta\left(s,\frac{b}{a}\right)-\log(a)\zeta\left(s,\frac{b}{a}\right)\right)

となりました。

一見ややこしい式ですが、0を代入すれば

\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}a^{-s}\zeta\left(s,\frac{b}{a}\right)_{s=0}=\frac{\partial}{\partial s}\zeta\left(0,\frac{b}{a}\right)-\log(a)\zeta\left(0,\frac{b}{a}\right)

となり、特殊値\displaystyle\zeta(0,x)=\frac{1}{2}-xを使うことで

\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}a^{-s}\zeta\left(s,\frac{b}{a}\right)_{s=0}=\frac{\partial}{\partial s}\zeta\left(0,\frac{b}{a}\right)-\left(\frac{1}{2}-\frac{b}{a}\right)\log(a)

というふうにフルヴィッツゼータの微分だけで書くことができます。あとはただこの微分を計算するだけです。

ここでは、黒川信重先生の名著「現代三角関数論」第2章3節にある証明をところどころ引用しながら進めていきます。



結論から言うと、

\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}\zeta(0,x)=\log\left(\frac{\Gamma(x)}{\sqrt{2\pi}}\right)

となります。

これはレルヒの公式と呼ばれるもので、 チェコの数学者マティアス・レルヒ(1860-1922)によって発見されたものです。

これを示すためには、

\displaystyle f(x):=\frac{\partial}{\partial s}\zeta(0,x)-\log\Gamma(x)

とおいて、

\displaystyle f(x)=-\frac{1}{2}\log(2\pi)

となることをいえばよいですね。証明は次の三段階で行いましょう:

(1) f''(x)=0を示す。したがって、f(x)=ax+bの形となる。ただしa,bは定数。

(2) f(x+1)=f(x)を示す。これからa=0がわかりf(x)=bとなる。

(3) \displaystyle f\left(\frac{1}{2}\right)=-\frac{1}{2}\log(2\pi)を示す。これにより、\displaystyle f(x)=-\frac{1}{2}\log(2\pi)がわかる。


(1)の証明

f(x)xについて2微分すると

\displaystyle f''(x)=\frac{{\partial}^3}{\partial x^2\partial s}\zeta(0,x)-\frac{d^2}{dx^2}\log\Gamma(x)

です。ここで

\displaystyle \zeta(s,x)=\sum_{n=0}^{\infty} (n+x)^{-s}

x微分すると

\displaystyle \begin{eqnarray}\frac{\partial}{\partial x}\zeta(s,x)&=&-s\sum_{n=0}^{\infty}(n+x)^{-s-1}\\&=&-s\zeta(s+1,x)\end{eqnarray}
\displaystyle \begin{eqnarray}\frac{{\partial}^2}{\partial x^2}\zeta(s,x)&=&s(s+1)\sum_{n=0}^{\infty}(n+x)^{-s-2}\\&=&s(s+1)\zeta(s+2,x)\end{eqnarray}

となります。これをs微分してs=0とすると

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{{\partial}^3}{\partial x^2\partial s}\zeta(0,x)&=&\zeta(2,x)\\&=&\sum_{n=0}^{\infty}(n+x)^{-2}\end{eqnarray}

となります。一方、

\displaystyle \frac{1}{\Gamma(x)}=xe^{\gamma x}\prod_{n=1}^{\infty}\left(1+\frac{x}{n}\right)e^{-\frac{x}{n}}

という無限積表示(これはワイエルシュトラスによるものですね)がありましたから、

\displaystyle-\log\Gamma(x)=\log{x}+\gamma x+\sum_{n=0}^{\infty}\log\left(1+\frac{x}{n}\right)-\frac{x}{n}

を得られます。よって、x微分すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}-\frac{d}{dx}\log\Gamma(x)&=&\frac{1}{x}+\gamma+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n+x}-\frac{1}{n}\\-\frac{d^2}{dx^2}\log\Gamma(x)&=&-\frac{1}{x^2}-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{(n+x)^2}\\&=&-\sum_{n=0}^{\infty} (n+x)^{-2}\\&=&-\zeta(2,x)\end{eqnarray}

となります。したがって

\displaystyle\begin{eqnarray}f''(x)&=&\frac{{\partial}^3}{\partial x^2\partial s}\zeta(0,x)-\frac{d^2}{dx^2}\log\Gamma(x)\\&=&\zeta(2,x)-\zeta(2,x)\\&=&0\end{eqnarray}

となって(1)が示されました。


(2)の証明

\displaystyle f(x+1)=\frac{\partial}{\partial s}\zeta(0,x+1)-\log\Gamma(x+1)

において

\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta(s,x+1)&=&\sum_{n=0}^{\infty} (n+x+1)^{-s}\\&=&\sum_{n=1}^{\infty} (n+x)^{-s}\\&=&\zeta(s,x)-x^{-s}\end{eqnarray}

および

\Gamma(x+1)=x\Gamma(x)

を用いると、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{\partial}{\partial s}\zeta(0,x+1)&=&\frac{\partial}{\partial s}\zeta(s,x)-\log x\\-\log\Gamma(x+1)&=&-\log\Gamma(x)-\log{x}\end{eqnarray}

となり、

\displaystyle\begin{eqnarray}f(x+1)&=&\frac{\partial}{\partial s}\zeta(0,x)-\log\Gamma(x)\\&=&f(x)\end{eqnarray}

を得ます。よって(2)が示されました。


(3)の証明

\displaystyle f\left(\frac{1}{2}\right)=\frac{\partial}{\partial s}\zeta\left(0,\frac{1}{2}\right)-\log\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)

を計算します。まず、

\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta\left(s,\frac{1}{2}\right)&=&\sum_{n=0}^{\infty} \left(n+\frac{1}{2}\right)^{-s}\\&=&2^s\sum_{n=0}^{\infty}(2n+1)^{-s}\\&=&2^s\left(\sum_{n=1}^{\infty}n^{-s}-\sum_{n=1}^{\infty}(2n)^{-s}\right)\\&=&2^s(1-2^{-s})\zeta(s)\\&=&(2^s-1)\zeta(s)\end{eqnarray}

に注目すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{\partial}{\partial s}\zeta\left(0,\frac{1}{2}\right)&=&(\log 2)\zeta(0)\\&=&(\log 2)\left(-\frac{1}{2}\right)\\&=&-\frac{1}{2}\log 2\end{eqnarray}

となります。また、特殊値\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}を用いることで

\displaystyle\begin{eqnarray}-\log\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)&=&-\log\sqrt{\pi}\\&=&-\frac{1}{2}\log\pi\end{eqnarray}

ということが導けます。したがって、

\displaystyle\begin{eqnarray}f\left(\frac{1}{2}\right)&=&\left(-\frac{1}{2}\log 2\right)+\left(-\frac{1}{2}\log\pi\right)\\&=&-\frac{1}{2}\log(2\pi)\end{eqnarray}

となります。これで(3)も示せました。レルヒの公式、これにて撃破。

では、これを使って再び等差数列の積の計算をすすめましょう。あとちょっと。


先程これを述べましたね:

\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}a^{-s}\zeta\left(s,\frac{b}{a}\right)_{s=0}=\frac{\partial}{\partial s}\zeta\left(0,\frac{b}{a}\right)-\left(\frac{1}{2}-\frac{b}{a}\right)\log(a)

これにレルヒの公式を適用してやることで、

\displaystyle\frac{\partial}{\partial s}a^{-s}\zeta\left(s,\frac{b}{a}\right)_{s=0}=\log\frac{\Gamma\left(\frac{b}{a}\right)}{\sqrt{2\pi}}-\left(\frac{1}{2}-\frac{b}{a}\right)\log(a)

とできます。


正規積の定義というのは「数列のゼータを微分して、0を代入して、マイナスをつけて、指数関数に入れる」ということでしたから、いまこの時点では「0を代入して」まで終わったことになりますね。


じゃあ、もう残った作業はこの式にマイナスを付けて指数関数に放り込むことだけです。ささっとやっちゃいましょう:

\displaystyle\begin{eqnarray}\exp\left(-\left(\log\frac{\Gamma\left(\frac{b}{a}\right)}{\sqrt{2\pi}}-\left(\frac{1}{2}-\frac{b}{a}\right)\log(a)\right)\right)&=&\exp\left(\left(\frac{1}{2}-\frac{b}{a}\right)\log(a)-\log\frac{\Gamma\left(\frac{b}{a}\right)}{\sqrt{2\pi}}\right)\\&=&a^{\frac{1}{2}-\frac{b}{a}}\frac{\sqrt{2\pi}}{\Gamma\left(\frac{b}{a}\right)}\end{eqnarray}



完成。

改めてきちんと結論を書いておきます。



\displaystyle\prod_{n=0}^{\infty} (an+b)=a^{\frac{1}{2}-\frac{b}{a}}\frac{\sqrt{2\pi}}{\Gamma\left(\frac{b}{a}\right)}


これが「等差数列の無限積」というものです。

とくに、a=1, b=1とすると面白い結果が得られます:

\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty} n=\sqrt{2\pi}


この結果は、レルヒの公式が発表されるより前にリーマンが関数等式\xi(s)=\xi(1-s)を用いて得ていたとされています。それについては僕もまだ計算できていないので、わかった方はコメントなりTwitterにリプライなりして頂けると嬉しいです。





ちょっとした問題演習を載せておきます。

おひまな方は取り組んでください、解けた方はコメントあるいは僕のTwitterまで。


問 以下の数列の正規積を求めよ。存在しない場合は証明せよ。

(1) 正の奇数

(2) 7の冪(1,7,49,343\cdots)

(3) 素数