たけのこ赤軍の自由帳

数論とかNonaReevesとかが好きな高校生のブログ。

ある多項式について

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:

Prince - 3121

Prince (Prince Rogers Nelson) - 3121, 2006 3121


さて今日は、わたくしたけのこ赤軍が半年以上に渡って悩み考えつつも答えを出せていないある問題についてのお話をしましょう。


まずはじめに、世の中には「二項定理」というものがあります。お読みのみなさんが高校生以上であるならば、数IIだか数Bだか知りませんがなんだかでやった覚えがあることと思います。

そう、

\displaystyle(x+y)^k=\sum_{k=0}^n \binom{n}{k}x^ky^{n-k}

コイツです。

今ここで、適当に複素数 q をとります。絶対値は1より小さいと考えて下さい。あるいは、あなたが複素数を何らかの理由でお嫌いなのであればq<1なる実数としていただいてもかまいません。

そんで、この二項定理に x=q,\,y=1-q を代入してみます。そうして以下のように計算を続けていきます:

\begin{eqnarray*}\displaystyle1&=&\sum_{k=0}^n\binom{n}{k}q^k(1-q)^{n-k}\\\frac{1}{(1-q)^n}&=&\sum_{k=0}^n \binom{n}{k}\frac{q^k}{(1-q)^k}\\&=&\frac{q^n}{(1-q)^n}+\sum_{k=0}^{n-1} \binom{n}{k}\frac{q^k}{(1-q)^k}\\\frac{1-q^n}{(1-q)^n}&=&\sum_{k=0}^{n-1}\binom{n}{k}\frac{q^k}{(1-q)^k}\\\frac{(q;q)_n}{(1-q)^n}&=&\sum_{k=0}^{n-1} \binom{n}{k}\frac{q^k}{(1-q)^k}(q;q)_{n-1}\frac{(q;q)_k}{(q;q)_k}\end{eqnarray*}

出てくる記号の意味は

o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com

をごらんください。


さて、ここまで変形は追えたでしょうか。追えなかった人はもう一度落ち着いて自分で手を動かしてくださいね。


新しい記号を導入しましょう:

\displaystyle[n]_q!:=\frac{(q;q)_n}{(1-q)^n}.

これがなんなのかといいますと、まぁ察しの良い方は気づいておられるのでしょうが、階乗のq-類似です。要するに、\lim_{q\rightarrow{1}}[n]_q!=n! となっているのです。


といいますのもこれは非常にかんたんな理屈で、上に挙げた記事でも言われているように整数 n のq-類似は [n]_q:=\frac{1-q^n}{1-q} なので、これらを掛け合わせているだけなんですね。


この「q-階乗」をつかうと、いま導いた式は

\displaystyle[n]_q!=\sum_{k=0}^{n-1} \binom{n}{k}q^k(1-q^{k+1})\cdot\cdots\cdots(1-q^{n-1})[k]_q!

というふうに書くことができます。空積の部分は慣例どおり1で計算してください。




ここまでよむと、「なんかq-階乗の関係式出して満足しとるぞコイツ変なやっちゃな」で終わるかもしれません。それでいいのならそれでもいいんですが・・・問題はここからです。

二項係数とはなんでしたか?そう、階乗を使って

\displaystyle\binom{n}{k}=\frac{n!}{k!(n-k)!}

と書けるものでしたよね。

では、これのq-類似ももちろん考えられるはずです。当然、

\begin{eqnarray*}\displaystyle\binom{n}{k}_q&=&\frac{[n]_q!}{[k]_q![n-k]_q!}\\&=&\frac{(q;q)_n}{(q;q)_k(q;q)_{n-k}}\end{eqnarray*}

としたくなりますよね。


ところで、上記で導いた式には二項係数が入っておりました。式の大部分がqにまみれているわけですから、あれにも手を加えたくなりますね。

ですが、ここではqではなく新しい変数pを導入します。即ち・・・


\displaystyle a_n(p,q)=\sum_{k=0}^{n-1} \binom{n}{k}_pq^k(1-q^{k+1})\cdot\cdots\cdots(1-q^{n-1})a_k(p,q)

を満たす多項式 a_k(p,q) を考えるのです。



これがたいそうむずかしい。ぼくが半年悩んでいるというのは、まさにこの、多項式 a_n を明示的な式で書くことなのです。



この問題、考えるもとになったのは「q-二項定理」です。最初に挙げた二項定理、あれのq-類似は

\displaystyle(-x;q)_n=\sum_{k=0}^{n-1}\binom{n}{k}_qx^kq^{k(k-1)/2}

となります。しかし、一般に「q-二項定理」といえばこれの「無限バージョン」、即ち

\displaystyle\frac{(az;q)_{\infty}}{(z;q)_{\infty}}=\sum_{n\geq{0}} \frac{(a;q)_n}{(q;q)_n}z^n

を指します。そう、q-二項定理には有限版と無限版があるのです。


ぼくはこの無限版のほうに着目しました。この定理において a=0 ととると、なんと無限q-Pochhammer記号の逆数のテイラー展開になっているのです。


こういってもピンとこないかもしれません。そんなあなたは、是非上に挙げたq-多重ガンマの記事を読み直して下さい。




もうおわかりでしょうか。




q-二項定理は、q-(一重)ガンマのフーリエ展開を与えているのです。


「"フーリエ"展開?"テイラー"展開の間違いだろ?」とお思いの方もいるかも知れません。ここでは本質的に同じなのですが、ぼくがわざわざフーリエ展開の名前を引っ張り出してきたのはq-多重ガンマに周期性があるからです。

記事では書いていませんでしたが、通常q-多重ガンマを考えるときには上半平面上の変数 \tau' をとり、q=exp(-2\pi i/\tau') とおいて考えます。このとき、

\displaystyle\Gamma_r^q(w+\tau';{\boldsymbol{\omega}})=\Gamma_r^q(w;{\boldsymbol{\omega}})

となります。証明は easy なので読者の演習問題とします。


要するに、q-二項定理(の特殊バージョン)をq-ガンマでかきなおすと

\displaystyle\Gamma_1^q(w;1)=\sum_{n\geq{0}} \frac{1}{(q;q)_n}q^{wn}

という風になるわけですが、これは変数 w に関して周期 \tau' をもつがゆえの話なのだよ、と言っているのです。




でもぼくは物足りませんでした。案の定というかなんというか、

\displaystyle\Gamma_r^q(w;{\boldsymbol{\omega}})=\sum_{n\geq{0}}c_{r,n}({\boldsymbol{\omega}})q^{wn}

とかやって、係数を求めようとしたのです。悲しいかな、多重化人間の性ですね。



しかしこれが存外に難しい。q-二項定理の証明と同じようにやっても、まるで歯がたたないのです。


しかたないので、二重バージョンに限って考えることにしました。もとのモチベーションでいうなら・・・

\displaystyle\prod_{i,j\geq{0}} (1-p^iq^jx)^{-1}=\sum_{n\geq{0}} c_n(p,q)x^n

として定義される p,q の有理関数 c_n を調べようとしたのです。

考えるうちにすぐわかったこととして、分母が (p;p)_n(q;q)_n である、即ち

\displaystyle c_n(p,q)=\frac{a_n(p,q)}{(p;p)_n(q;q)_n}

としたとき、a_n多項式になるというのです。これがまさに先程話題にした多項式 a_n のことです。



ところが、計算しても計算しても手がかりは得られませんでした。最初の10項ぐらいを求めて帰納法でゴリ押しを試みるも、規則性は全く思い浮かばず。かろうじてわかったことといえば・・・


(1) 対称的、即ち a_n(p,q)=a_n(q,p) である
(2) 特殊値はq-階乗になる: a_n(1,q)=a_n(q;1)=[n]_q!
(3) 最高次の項は斉次、即ち a_n(p,q)=1+\cdots+p^mq^m と書けて、次数は m=n(n-1)/2 として求められる

の三つです。うーん、わからない。




この多項式 a_n についてなにかわかった方がいらっしゃったら、この記事のコメント欄か、ぼくの twitter @691_7758337633 まで教えてください。
些細な情報、手がかりでも構いません。どうか宜しくおねがいします。

奇数ゼータのある級数表示

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:

The Jacksons - Heartbreak Hotel

Michael Jackson Heartbreak Hotel Live Yokohama 1987


今回の記事は Wikipediaリーマンゼータ関数 - Wikipedia に記載のある「ラマヌジャンが得た \zeta(2n+1) の表示」についてです。

様々な証明があるようですが、(2018年現在)高校生の私にはラマヌジャンによる原証明にはアクセスできませんでした。ネット上に上がっている文献は Berndt(読みがわからない)によるものや片山孝次さんのものがありますが、前者は outline だけで後者は n=1 の場合しか示しておらず、きちんとしたフルの証明が得られませんでした。
しかし今年3月の研究集会で加藤正輝さんに教えていただいた結果では、「二重余接関数のある種の加法型公式」の系としてかの公式の一般形が得られるそうです。私はコレに興味を持って勉強しました。2ヶ月。


結論から言うと、あまりよくわかりませんでした。


というのも、証明に出てくるゲルフォント-シュナイダーの定理(超越数で有名なアレ)の使い所がイマイチよくわからなかったためです。signed double Poisson summation formula が鍵を握っていることはわかるのですが、それ以上は。。。という状態。



ということで自力で (nが奇数の場合の、偶数のときは easy) 新証明を構築しました。少なくとも私が知ることのできる範囲では指摘されていませんでした。
いつしか話した ``4次元モノイドゼータ" の構成がおおいに役に立ちます。


さて
o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com
補題2の証明後すぐにある等式
\begin{eqnarray}\displaystyle \zeta_4^M(s)&=&\frac{1+e^{i\pi s}}{1+e^{\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{3i\pi s}{2}}}\left(\zeta(s)+\frac{(-2\pi i)^s}{\Gamma(s)}\sum_{n=1}^{\infty} \sigma_{s-1}(n)e^{-2\pi n}\right)\end{eqnarray}
が効いてきます。後ろの総和が
\begin{eqnarray*}\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty} \sigma_{s-1}(n)e^{-2\pi n}&=&\sum_{n=1}^{\infty} \sum_{m=1}^{\infty} m^{s-1}e^{-2\pi mn}\\&=&\sum_{m\geq{1}} m^{s-1} \frac{e^{-2\pi m}}{1-e^{-2\pi m}}\\&=&\sum_{k=1}^{\infty} \frac{k^{s-1}}{e^{2\pi k}-1}\end{eqnarray*}
となることはすぐにわかります(ランベルト級数)。さて我々は今回 \zeta_4^M(-4k-2) を各 k=0,1,2,\cdots に対して求めていくことになります。ロピタルの定理を使うだけのちょっとした計算問題なので読者の皆さんにおまかせしますが、この表示から言えることは
\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta_4^M(-4k-2)=\frac{i}{\pi}(2\pi)^{-4k-2}(4k+2)!\left(\zeta(4k+3)+2\sum_{n\geq{1}} \frac{n^{-4k-3}}{e^{2\pi n}-1}\right)\end{eqnarray*}
です。

で一方、\zeta_4^M(s)=\zeta_2(s,1,(1,i)) なので(黒川ノーテーション)、今得た特殊値は多重ゼータの解析接続からも得られることがわかります。
ただ残念なことにその結果は一般的な形で書かれた文献がありませんでした(私が見た限り)。証明はかんたんで、例えば「現代三角関数論」§2.2の計算と全く同様にしてできるほか、片山さんと大槻さんの論文 ``On the multiple gamma function" の命題1には0と-1の場合における結果が与えられています。

ここで一般的に書くなら、まず多重ベルヌーイ多項式
\begin{eqnarray*}\displaystyle\frac{e^{-wt}}{\prod_{j=1}^r (1-e^{-\omega_jt})}=\sum_{n\geq{r}} a_{r,n}(w,{\boldsymbol{\omega}})\end{eqnarray*}
で定義すれば
\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta_r(-n,w,{\boldsymbol{\omega}})=(-1)^nn!a_{r,n}(w,{\boldsymbol{\omega}})\end{eqnarray*}
となります。これも演習問題でええか。



となればこれらの結果を等置したくなりますね!!!




後者の結果を我々の値のために具体的に書くなら
\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta_4^M(-4k-2)&=&\zeta_2(-4k-2,1,(1,i))\\&=&(4k+2)!a_{2,4k+2}(1,(1,i))\end{eqnarray*}
ですね。さらに、私が書いた今年の夏休みの自由研究にある命題2.1 (4)からこの定数をベルヌーイ数の積で具体的に書くことができます(これも証明はかんたんで、実際の自由研究では一般の多項式としての a_{r,n} に対して示しています。本記事では付録で証明)。つまり、
\begin{eqnarray*}\displaystyle a_{r,4k+2}(1,(1,i))=-i\sum_{j=0}^{2k+2} \frac{B_{2j}B_{4k+4-2j}}{(2j)!(4k+4-2j)!}(-1)^j\end{eqnarray*}
ですね。ここから先程得た値と合わせて、容易に求めたかった等式
\begin{eqnarray*}\displaystyle\zeta(4n+3)+2\sum_{n\geq{1}} \frac{n^{-4k-3}}{e^{2\pi n}-1}=-\sum_{j=0}^{2k+2} \frac{B_{2j}B_{4k+4-2j}}{(2j)!(4k+4-2j)!}(-1)^j\end{eqnarray*}
を得ることができます。

なおラマヌジャンの実際のリザルトはこれよりももう少し広い範囲(というか保型形式的な観点で)から見ているようなのですが、この手法をその定理に使えるまでに一般化できないかと模索中です。


[ほだい]

 k\geq{-r} にたいして
\begin{eqnarray}\displaystyle a_{r,k}(w,{\boldsymbol{\omega}})=\sum_{l=-|B|}^{|A|+k} a_{|A|,k-l}(a,A)a_{|B|,l}(b,B).\end{eqnarray}
がせいりつする. ここで B\neq{\emptyset}\{\omega_1,\cdots,\omega_r\} のぶぶんしゅうごうで, A=B\setminus{\{\omega_1,\cdots,\omega_r\}}, a,ba+b=w をみたすふくそすうとする.


[しょうめい]

\begin{eqnarray*}\displaystyle e^{-at}\prod_{j\in{A}} (1-e^{-\omega_jt})^{-1}&=&\sum_{L\geq{-|A|}} a_{|A|,L}(a,A)t^L\\e^{-bt}\prod_{j\in{B}}(1-e^{-\omega_jt})^{-1}&=&\sum_{M\geq{-|B|}} a_{|B|,M}(b,B)t^M.\end{eqnarray*}
であるから
\begin{eqnarray*}\displaystyle\sum_{N\geq{-r}} a_{r,N}(w,{\boldsymbol{\omega}})=\sum_{L\geq{-|A|},M\geq{-|B|}}a_{|A|,L}(a,A)a_{|B|,M}(b,B)t^{L+M}\end{eqnarray*}
よりわかる.


[しゃじ]

このほだいのしょうめいをかんがえてくれた、ぬ (@nu_un_nu_un_nu) くんにかんしゃします。


[さんこーぶんけん]
かたやま こうじ, おおつき まこと, ''おん ざ まるちぷる がんま ふぁんくしょん", とうきょう じゃーなる おぶ ませまてぃくす, ぼりゅーむ 21, なんばー 1 (1998), 159 ぺーじから 182 ぺーじ.
ぼく, ''じぇねららいずど すたーりんぐ ふぉーみゅら ふぉー まるちぷる がんま ふぁんくしょん", なつやすみのじゆうけんきゅう.

π>3 の証明

1 年ぐらい前から作ろうと思って結局書くのがめんどくさく放置していた pdf を深夜テンションの助けを借りてようやく書き終えたので公開します。
内容は π>3 の(保型形式を使った)証明です。Fourier 展開の話とかはめんどくさかったので証明していませんが、予備知識はいらないと思います。

pi _ 3.pdf - Google ドライブ

q-多重ガンマの話

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:
Prince - Controversy


Prince - Controversy - 01/30/82 - Capitol Theatre (OFFICIAL)



q-多重ガンマ関数、というのがあります。ガンマ関数は皆さんご存知、階乗の一般化です。指数関数のメリン変換とかいわれるのが多いですね。

んで、多重ガンマ関数というのはガンマ関数の「多重化」というものです。いろいろ変数を増やして一般化したもので、「一重ガンマ関数」は普通のガンマ関数にあたります。

要するにq-多重ガンマというのは多重ガンマ関数のq-類似というわけですね。q-類似というのは既存の概念(関数とか)に q という新しいparameterを導入して一般化することです。q\rightarrow{1} の極限で元の概念になるように定めるものです。


数学(とくに解析学)に出てくるモノになんでもかんでもqをくっつけて遊ぶことを「q-解析」といいます。

数学というのは「数を学ぶ」と書きますので、当然最も基本的なモノは「数」ですね。古代からヒトは数をいじって遊んでおりました。現代でも小さい子供がお風呂に入ると「百まで数えてから出なさい」とか言われたりしますね。

そうするとお風呂に入れられた子供は「ただ一から百まで数えるのもつまらないから、q-一からq-百まで数えよう」と思うわけですね。一生懸命に「いち、いちたすq、いちたすqたすq^2」という具合に数えていくわけです。

そう、自然数 n のq-類似は 1+\cdots+q^{n-1} になるのです。「なるのです」というかそう定めるのです。もちろん (1-q^n)(1-q)^{-1} とも書けますね。こっちのほうがカッコええな。



では自然数が定まったところで、q-多重ガンマを作りましょう・・・と言いたいところですが、まずその前にq-解析で非常によく出てくるやつを定めます。

\displaystyle (a;q)_{\infty}=\prod_{n\geq{0}} (1-aq^n)

これはq-ポッホハマー記号とかいうやつです。a とか q とかの範囲は割とどうでもいいですがまぁ気になる方は |q|<1 とでもしておいてください。

さてこいつには右下に \infty の記号がついておりますね。要するにこいつはq-ポッホハマーの中でも「無限版」だということです。

無限版があるということは当然有限版もありますね。それはこんな感じです:

\displaystyle (a;q)_n=\prod_{k=0}^{n-1}(1-aq^{k})

見れば分かるように (a;q)_n=(a;q)_{\infty}(a;q^n)_{\infty}^{-1} とも書けますね。



さて「q-ポッホハマー記号」なんて名前をしてるということは当然qを付ける前の「ポッホハマー記号」もあるというわけですが、こいつは割と有名なもので、

(a)_n=a(a+1)\cdot\cdots\cdot(a+n-1)

っていうやつです。「階乗冪」とか言ったりしますね。ぼくは「shifted factorial」って言い方がカッコよくて好きです。

q-ポッホハマーを元のポッホハマーに戻すにはちょっとした補正が必要で、だいたいこんな感じです:

\displaystyle \lim_{q\rightarrow{1}} (a;q)_n(1-q)^{-n}=(a)_n



んでq-ポッホハマーなんか作って何をするんやという話なのですが、まず「正規積」というものを思い出してください。ぼくが何回かブログに出してたはずです。

その正規積を使って、多重ガンマ \Gamma_r(w,{\boldsymbol{\omega}}) はこう書けるのです:

\displaystyle \Gamma_r(w,{\boldsymbol{\omega}})^{-1}=\prod_{{\bf n}\geq{{\bf 0}}} ({\bf n}\cdot{\boldsymbol{\omega}}+w)

記号の意味は
o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com
を見てください。

さてこいつのq-類似をつくりたいのですが、非常に単純な発想でできます。右辺の積の因子をq-類似にしてやればいいだけです。

さきほど自然数のq-類似を定めましたが、より一般に複素数 z に対してもこれのq-類似を (1-q^z)(1-q)^{-1} として定めることができます。ロピタルの定理を使えばq→1で一致することは示せます。

というわけで、こんなものを作りましょう:

\displaystyle \Gamma_r^q(w,{\boldsymbol{\omega}})^{-1}=\prod_{{\bf n}\geq{\bf 0}} (1-q^{{\bf n}\cdot{\boldsymbol{\omega}}+w})

ほんとうは右辺の積の因子に (1-q)^{-1} がかかっていないとまずいのですが、この積は上記 \Gamma_r と違って正規積ではないので(本当は記号が違うのですが、はてなブログでは正規積記号に対応していませんでした、申し訳ない)、その因子をつけると収束がメンドくなります。


さて、こいつで r=1 の場合を考えてみましょう。要するに「一重」のケースですね。なんとこうなります:

\Gamma_1^q(w,\omega_1)=(q^w;q^{\omega_1})_{\infty}^{-1}

そらそうやな。さらに \omega_1=1 としてみましょう:

\Gamma_1^q(w,1)=(q^w;q)_{\infty}^{-1}

右辺は一種のテータ関数みたいなもん(ヤコビ三重積の因子と思ってもらえればわかりやすいかも)なので、テータをガンマ(の一般化)で書けたことになりますね。カッコええやろ。

もちろんq-多重ガンマには面白い成分がいっぱい詰まっておるのですが、今回はこの辺で。

近況報告

最近ブログが更新できておらず申し訳ありません。理由は

10%:やってる数学の量が多くて簡単にブログに書けるようなものではない
90%:このブログの存在を忘れていた

ことです。

最近やっている数学の話

正月の数学カフェが終わってから1ヶ月ほどは何もしておらず、それからついこないだまでの一ヶ月半(2018年2月上旬~3月下旬)は主に多重ガンマ関数に興味が湧いておりそのあたりをいろいろ調べていました。
発端は1976年の新谷卓郎先生の論文
https://projecteuclid.org/download/pdf_1/euclid.tjm/1270472992
で、「現代三角関数論」においてこの論文に載ってある等式が(結果だけ)引用されており、それに興味を持ったのでした。スターリング保型形式の積 \rho_2(1,\tau)\rho_2(1,-\tau) が簡単な因子を除いて半整数ウェイトの保型形式になるというもので、この論文では二重ガンマ関数の積分表示を用いて証明していました。
この一ヶ月半ではその一般化を考えていて、$r$ 重ガンマの積分表示から $r$ 重スターリング保型形式の積の表示を出そうと奮闘していました。いい感じのpdfが書けたので近々公開しようと思います。

そしてそれから今までの2週間はちょっと趣向を変えてq-解析に手を出していました。というのも、3月の頭に神戸大学で行われた多重三角関数の研究集会に行ってきまして。(中学校の学ランで乗り込んだらずいぶんと驚かれました。)
3日間の全日程参加したのですが、そこで紹介された多重楕円ガンマ関数というものに興味がわきました。少し計算してみるとそれはどうもq-多重ガンマで書けるようで、結局のところq-多重ガンマを考えるのが良いんではないかという結論に至りました。q-二項定理の一般化とかできたらいいなーって思ってます。

音楽の話とか

12月ごろからプリンスの音楽ばかり聴いているのですが、一週間に一回ぐらいCD屋・レコード屋を巡ってアルバムをかき集めていたところ、なんと多作な彼のアルバムのうち約半分が揃ってしまいました。詳細なディスコグラフィの一覧はWikipediaに譲るとして、いまぼくが持っているアルバムは以下です:

・Prince(愛のペガサス)
・Dirty Mind
・Controversy(戦慄の貴公子)
・1999
・Purple Rain Expanded
・Around The World In A Day
・Parade
・Sign 'O' The Times
・Lovesexy
・Graffiti Bridge
・Diamonds And Pearls
・Love Symbol
・Come
・Chaos And Disorder
・Emancipation
・The Vault: Old Friends 4 Sale
・Rave Un2 The Joy Fantastic
・Art Official Age
・Plectrumelectrum
・HITnRUN Phase 1
・HITnRUN Phase 2

こうして見ると2000年代のアルバムがごっそり抜け落ちていますね。というのも、殿下は当時の通常流通ルートから外れるのにハマっていたようです。The Slaughterhouseなんかは(当時主流ではなかった)ダウンロード限定販売ですし、Planet Earth(地球の神秘)に至っては発売前にイギリスの新聞にくっつけて無料配布するというとても常人には思いつかないことをやっています。いまでは殿下が亡くなったこともあってダウンロード販売のものも徐々に物理的な販売がなされてきましたが、それでも手に入りづらいですね。
デビューから90年ごろにかけては何度か再発がなされたこともあって中古屋なんかでは比較的安く手に入ります(これは殿下に限らず、マイケル・ジャクソンのInvincibleなんかも300円ほどで売っていることがあります)が、97年のCrystal Ballなんかだと安い店でも12000円ほどします。再発が待ち遠しいです。なお99年のRave Un2~は梅田の「ディスクユニオン」で450円で手に入れました。やっす!こんな名盤がワンコインで売られていいんでしょうか。

最近お気に入りのアルバムはParadeと1999です。やはり殿下全盛期のアルバムは良いですね。Paradeに関しては本人が「Kiss以外は失敗作」と仰っていましたがとんでもない、名曲揃いです。もちろんKissがヒットしたのは事実ですが・・・(When Doves Cry(ビートに抱かれて)に続く2曲目のベースなし曲というのもあります。)
Paradeでとくに好きなのはNew PositionとGirls&Boysです。このアルバムは基本的に全曲がつながっていて、通しで聴くのが本来の聴き方なのですが、一曲一曲のインパクトが凄まじいのでどうしても単独で聴きたくなります。ただし、Girls&Boysを聞き終わってから他の曲に行くのはやはり違和感があります。そこからもともとのLife Can Be So Niceに繋ぐのがベストですね。
一方で1999はシングル・カットされたLittle Red Corvetteがあるにもかかわらず、不思議とアルバムまるごと聴くほうがしっくりきます。前半の1999からAutomaticまでの流れは一曲たりとも飛ばせません。しかし歌詞のインパクトが強いアルバムで、タイトル曲の1999なんかは「空は紫色に染まり、人々は逃げ惑う。しかしお分かりの通り、俺はちっとも気にしちゃいない」なんて。もちろん人類の終末をテーマにしたものですが、空が紫色に染まっているあたり殿下ですね。というか、こんなに楽しい曲調で終末を歌うのがもうすごいですね。5年後のSign 'O' The Timesではもうちょっとまじめにやっているのですが。

I Wanna Be Your Modular

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:
Nona Reeves - Sweet Survivor

NONA REEVES 『Sweet Survivor』




本記事は 日曜数学 Advent Calendar 2017 - Adventar 23日目の記事です。22日目の記事はmattyuu氏による p進距離はなぜ特別か? - mattyuuの数学ネタ集 でした。



世の中には「モジュラー形式」というものがあります。

よく知られているものだと、フェルマーの最終定理を証明する際にワイルズがこれと楕円曲線との関連を示したというところです。

これを黒川信重先生による"絶対数学"の舞台に乗せてできたものが Absolute Modular Form、「絶対保型形式」です。定義は少々面倒なので、今日はすこし具体例を眺めてみましょう。

1900年ごろ、バーンズはガンマ関数の多重化というアイデアを考えつきました―――これこそが黒川先生らの考える多重三角関数論の源流です。

これはレルヒの公式の一般化によって定義されるものであり、通常のガンマ関数と同じように無限積で書き下すことができます。

\begin{eqnarray}\displaystyle\Gamma(w)^{-1}&=&\exp\left(\left.\frac{\partial }{\partial s}\zeta(s,w)\right|_{s=0}\right)\\&=&\rho_1(1)we^{\gamma w}\prod_{0\neq{n}\geq{0}}^{} \left(1+\frac{w}{n}\right)e^{-\frac{w}{n}}\\\Gamma_r(w,{\bf \omega})&=&\exp\left(\left.\frac{\partial}{\partial s}\zeta_r(s,w,\omega)\right|_{s=0}\right)\\&=&\rho_r({\bf \omega})we^{P_{\omega}(w)}\prod_{{\bf 0}\neq{\bf n}\geq{\bf 0}}^{}\left(1+\frac{w}{{\bf n}\cdot{\bf \omega}}\right)\exp\left(\sum_{k=1}^{r} \left(-\frac{w}{\bf n\cdot{\bf \omega}}\right)^k\right) \end{eqnarray}

ここで \begin{eqnarray}\displaystyle\zeta_r(s,w,\omega)=\sum_{{\bf n}\geq{\bf 0}}^{} ({\bf n}\cdot\omega+w)^{-s},\end{eqnarray}

P_{\omega}(w)\omega によってきまる wr多項式で、 {\bf 0}\neq{\bf n}\geq{\bf 0} というのは {\bf n}=(n_1,\cdots n_r)\in\mathbb{Z}^r に対して n_i\geq{0}(i=1,2,3,\cdots) かつ {\bf n}\neq{(0,\cdots 0)} であることをいいます。

\omega はボールド体ではない(TeXで打てなかった)ですが、複素数 r 個の組 (\omega_1,\cdots,\omega_r) だと理解してください。

{\bf n}\cdot{\omega}=n_1\omega_1+n_2\omega_2+\cdots+n_r\omega_r です。




さてこれらを比較してみると、まず \rho_1(1) が気になりますね。 \Gamma_r はもともと \Gamma を一般化したものですから、 \rho_1(1) を一般化して \rho_r(\omega) が出てきたのだと推測できます。

o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com

で紹介したレルヒの公式からすると、 \rho_1(1)=\sqrt{2\pi} でなくてはならないはずです。そして、この値はまた

\begin{eqnarray}\displaystyle\sqrt{2\pi}=\prod_{0\neq{n}\geq{0}}^{} n\cdot{1}\end{eqnarray}

でもありました。複素数 r 個の組 \omega は「周期」と呼ばれ、多重ガンマ関数 \Gamma_r の補助的な変数になっています(メインの変数はもちろん w )。つまり、一般化を逆にたどると \Gamma_1(w,1)=\Gamma(w) であるということですね。

ここまでくると、 \rho_r(\omega) をどう定義すればいいかはもう見当がつきます。もちろん

\begin{eqnarray}\displaystyle\rho_r(\omega):=\prod_{{\bf 0}\neq{\bf n}\geq{\bf 0}}^{} {\bf n}\cdot\omega\end{eqnarray}

ということですね。ところでこれは正規積なので、書き直してみると

\begin{eqnarray}\displaystyle\zeta_r^{\star} (s,\omega)=\sum_{{\bf 0}\neq{\bf n}\geq{\bf 0}}^{} ({\bf n}\cdot\omega)^{-s}\end{eqnarray}

として

\begin{eqnarray}\displaystyle\rho_r(\omega):=\exp\left(\left.\frac{\partial}{\partial s}\zeta_r^{\star} (s,\omega)\right|_{s=0}\right)\end{eqnarray}

とも書けますね。ということで、こいつが今回扱う「絶対保型形式の一例」です。本記事の目標は r=2 における特殊な例、 \rho_2(1,i) を明示的に求めることとしましょう。




それを示すためにはたくさんの道具が必要なのですが、そのうちの一つをここで定義します:

\begin{eqnarray}\displaystyle\zeta_4^M(s):=\sum_{m\geq{1},n\geq{0}}^{} (m+ni)^{-s}\end{eqnarray}

これは私が導入した関数で、私が勝手に4次元モノイドゼータと呼んでいるものです。詳細については2018/1/7に数学カフェで行われる講演の資料(終了後公開予定)を参照してください。


[補題1(ポアソン和公式)]

\begin{eqnarray}\displaystyle\sum_{n\in\mathbb{Z}}^{} f(n)=\sum_{m\in\mathbb{Z}}^{} \widehat{f}(m)\end{eqnarray}

[証明]

 f:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R} に対してのフーリエ変換の定義

\begin{eqnarray}\displaystyle\widehat{f}(y):=\int_{-\infty}^{\infty} f(x)e^{-2\pi ixy} dx\end{eqnarray}

を思い出しておきます。

\displaystyle h(x)=\sum_{n\in{\mathbb{Z}}}^{} f(x+n)

としたとき、 h(x) は明らかに周期 1 なのでフーリエ展開

h(x)=\sum_{n\in{\mathbb{Z}}}^{} a_ne^{2\pi inx}

をもつ、というのがわかります。

\begin{eqnarray}a_n&=&\int_0^1 h(x)e^{-2\pi inx}dx\\&=&\sum_{m\in{\mathbb{Z}}}^{} \int_0^1 f(x+m)e^{-2\pi inx}dx\end{eqnarray}

ですが、 y=x+m で変数変換すると積分範囲は [0,1] から [m,m+1] となり、 \displaystyle\frac{dy}{dx}=1 より

\begin{eqnarray}a_n&=&\sum_{m\in\mathbb{Z}}\int_m^{m+1} f(y)e^{-2\pi in(y-m)}dy\\&=&\int_{-\infty}^{\infty} f(y)e^{-2\pi iny}dy\\&=&\widehat{f}(n).\end{eqnarray}

ゆえに

\begin{eqnarray}h(x)&=&\sum_{n\in\mathbb{Z}}^{} f(x+n)\\&=&\sum_{n\in\mathbb{Z}}^{} \widehat{f}(n)e^{2\pi inx}.\end{eqnarray}

となります。両辺で x=0 とすると目的の公式を得られます。[証明終]




[補題2(リプシッツ和公式)]

\begin{eqnarray}\displaystyle\sum_{m\in\mathbb{Z}}(m+z)^{-s}=\frac{(-2\pi i)^s}{\Gamma(s)}\sum_{m=1}^{\infty} m^{s-1}e^{2\pi imz}\end{eqnarray}

[証明] ※日本語で証明している本・文献が見つからなかったのでクノップとロビンスの論文"Easy proofs of Riemann's functional equation for \zeta(s) and of Lipschitz summation"のTheorem 1の証明を参考にしています。

f(x)=\begin{cases}
    x^{s-1}e^{2\pi ixz} & (x>0) \\
    0 & (x\leq{0})
  \end{cases}

として、ポアソン和公式を適用します:

\begin{eqnarray}\displaystyle\sum_{m=1}^{\infty} m^{s-1}e^{2\pi imz}&=&\sum_{n\in\mathbb{Z}}^{} f(n)\\&=&\sum_{m\in\mathbb{Z}}^{} \widehat{f}(-m)\\&=&\sum_{m\in\mathbb{Z}}^{} \int_{0}^{\infty} x^{s-1}e^{2\pi ixz}e^{2\pi imx}dx\\&=&\sum_{m\in\mathbb{Z}}^{} \int_{0}^{\infty} x^{s-1}e^{-(-2\pi i(m+z))x}dx\\&=&\sum_{m\in\mathbb{Z}}^{} (-2\pi i(m+z))^{-s}\Gamma(s)\end{eqnarray}

となって、両辺を整理すると証明できます。[証明終]


さてこれを使うことで、 \zeta_4^M の解析接続(のような何か)を行うことが可能です。自然対数の偏角(-\pi,\pi] にとるものとして、

\begin{eqnarray}\displaystyle\zeta_4^M(s)&=&\frac{(1+e^{-\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{i\pi s}{2}})}{(1+e^{-\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{i\pi s}{2}})}\zeta_4^M(s)\\&=&\frac{1+i^{-s}+(-1)^{-s}+(-i)^{-s}}{(1+e^{-\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{i\pi s}{2}})}\zeta_4^M(s)\\&=&\frac{1}{(1+e^{-\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{i\pi s}{2}})}\sum_{m,n\in\mathbb{Z}\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{} (m+ni)^{-s}\\&=&\frac{1}{(1+e^{-\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{i\pi s}{2}})}\sum_{m,n\in\mathbb{Z}\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{} (m+ni)^{-s}\\&=&\frac{1}{(1+e^{-\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{i\pi s}{2}})}\left(\sum_{m,n\in\mathbb{Z}\atop{n\neq{0}}}^{} (m+ni)^{-s}+\sum_{0\neq\in\mathbb{Z}}^{} m^{-s}\right)\\&=&\frac{1}{(1+e^{-\frac{i\pi}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{i\pi}{2}})}\left( (1+(-1)^{-s})\sum_{m\in\mathbb{Z},n\geq{1}}^{} (m+ni)^{-s}+(1+(-1)^{-s})\zeta(s)\right)\\&=&\frac{1+e^{-i\pi s}}{(1+e^{-\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{i\pi s}{2}})}\left(\zeta(s)+\sum_{m\in\mathbb{Z}}^{} \sum_{n=1}^{\infty} (m+ni)^{-s}\right)\\&=&\frac{1+e^{-i\pi s}}{(1+e^{-\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{i\pi s}{2}})}\left(\zeta(s)+\sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-2\pi i)^s}{\Gamma(s)}\sum_{m=1}^{\infty} m^{s-1}e^{-2\pi mn}\right)\end{eqnarray}

となるので、和の変数を mn から n におきかえて整理すると
\begin{eqnarray}\displaystyle \zeta_4^M(s)&=&\frac{1+e^{i\pi s}}{(1+e^{\frac{i\pi s}{2}}+e^{-i\pi s}+e^{\frac{3i\pi s}{2}})}\left(\zeta(s)+\frac{(-2\pi i)^s}{\Gamma(s)}\sum_{n=1}^{\infty} \sigma_{s-1}(n)e^{-2\pi n}\right)\end{eqnarray}

を得ます。これは通常発散するはずの値も求めることができて、今回使うのは s=0 の場合です(一般の負の整数に対しても明示的に求めることが可能です。1/7数学カフェで詳細をお話します)。簡単に計算できて

\begin{eqnarray}\displaystyle\zeta_4^M(0)=-\frac{1}{4}\end{eqnarray}

となります。この値を後で使います(っていうかこの記事で \zeta_4^M を導入したのはこれを使うためだけです)。


これはまだ準備段階の更に最初の方で、ここから延々と計算のキツイ補題が続いていくのですが、一つの記事に収めるのは到底不可能なのでここではいくつかをFactとして認めることにします(あまりにも記述量が膨大になってしまうことに投稿一日前に気づきました。ごめんなさい。今度書きます)。

とりあえず、明解にするために一番大きな定理をここで出してしまいます:



[主定理(新谷、1980)]

\begin{eqnarray}\displaystyle\rho_2(1,z)\rho_2(1,-z)=(2\pi)^{\frac{3}{2}}z^{-\frac{1}{2}}\eta(z)\exp\left(\pi i\left(\frac{1}{4}+\frac{1}{12z}\right)\right)\end{eqnarray}

ここで\begin{eqnarray}\displaystyle\eta(z):=e^{\frac{\pi iz}{12}}\prod_{n=1}^{\infty} (1-e^{2\pi inz})\end{eqnarray}


まずこれを使って目標である \rho_2(1,i) を先に求めてしまいます(膨大な記述、というのはこの定理の証明のことです): z=i として、

\begin{eqnarray}\displaystyle\rho_2(1,i)\rho_2(1,-i)&=&(2\pi)^{\frac{3}{2}}e^{-\frac{i\pi}{4}}\eta(i)e^{\frac{i\pi}{4}+\frac{\pi}{12}}\\&=&(2\pi)^{\frac{3}{2}}\eta(i)e^{\frac{\pi}{12}}\end{eqnarray}

となり、それなりに簡単に書けました。

次に、また記号を改めた関数を導入します:

\begin{eqnarray}\displaystyle\zeta^{\star}(s,a):=\sum_{m,n\geq{0}\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{} (m+na)^{-s}\end{eqnarray}

これを使うと、今問題にしている \rho_2(1,i), \rho_2(1,-i) が次のように書けます:

\begin{eqnarray}\displaystyle\rho_2(1,i)&=&\exp\left(-\left.\frac{d}{ds}\zeta^{\star}(s,i)\right|_{s=0}\right)\\\rho_2(1,-i)&=&\exp\left(-\left.\frac{d}{ds}\zeta^{\star}(s,-i)\right|_{s=0}\right)\end{eqnarray}

そして、

\begin{eqnarray}\displaystyle\zeta^{\star}(s,-i)&=&\sum_{m,n\geq{0}\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{} (m-in)^{-s}\\&=&(-i)^{-s}\sum_{m,n\geq{0}\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{} (n+im)^{-s}\\&=&e^{\frac{i\pi s}{2}}\zeta^{\star}(s,i)\end{eqnarray}

となることより、

\begin{eqnarray}\displaystyle\rho_2(1,i)\rho_2(1,-i)&=&\exp\left(-\left.\frac{d}{ds}\left(\zeta^{\star}(s,i)+\zeta^{\star}(s,-i)\right)\right|_{s=0}\right)\\&=&\exp\left(-\left.\frac{d}{ds}(1+e^{\frac{i\pi s}{2}})\zeta^{\star}(s,i)\right|_{s=0}\right)\\&=&\exp\left(-\left.\frac{i\pi}{2}e^{\frac{i\pi s}{2}}\zeta^{\star}(s,i)+(1+e^{\frac{i\pi s}{2}})\left(\frac{d}{ds}\zeta^{\star}(s,i)\right)\right|_{s=0}\right)\end{eqnarray}

というのが導かれます。また、

\begin{eqnarray}\displaystyle\zeta^{\star}(s,i)&=&\left(\sum_{m\geq{1},n\geq{0}}^{} (m+ni)^{-s}\right)+\left(\sum_{n=1}^{\infty} (ni)^{-s}\right)&=&\zeta_M^4+e^{-\frac{i\pi s}{2}}\zeta(s)\end{eqnarray}

なのでもちろん \displaystyle \zeta^{\star}(0)=-\frac{1}{4}-\frac{1}{2}=-\frac{3}{4} です。ここから

\begin{eqnarray}\displaystyle\rho_2(1,i)\rho_2(1,-i)&=&e^{\frac{3i\pi}{8}}\exp\left(-\left.2\left(\frac{d}{ds}\zeta^{\star}(s,i)\right)\right|_{s=0}\right)\\&=&e^{\frac{3i\pi}{8}}\rho_2(1,i)^2\end{eqnarray}

がわかって、さっき導いた \rho_2(1,i), \rho_2(1,-i) の式と合わせて

\begin{eqnarray}\displaystyle e^{\frac{3i\pi}{8}}\rho_2(1,i)^2=(2\pi)^{\frac{3}{2}}\eta(i)e^{\frac{\pi}{12}}\end{eqnarray}

が出ます。 \rho_2(1,i) を中心に整理すると

\begin{eqnarray}\displaystyle \rho_2(1,i)=(2\pi)^{\frac{3}{4}}\sqrt{\eta(i)}e^{\frac{\pi}{24}-\frac{3i\pi}{16}}\end{eqnarray}

となりますね。まだ残っている \eta(i) が気になりますが、これは

o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com

の定理1と保型形式間に成り立つ関係式

\begin{eqnarray}\displaystyle\eta(z)^{24}=\frac{E_4^3-E_6^2}{1728}\end{eqnarray}

からすぐに値を求めることができます(この関係式については

tsujimotter.hatenablog.com

も参照)。実際には \displaystyle\eta(i)=\frac{\Gamma\left(\frac{1}{4}\right)}{2\pi^{\frac{3}{4}}} なので、結局

\begin{eqnarray}\displaystyle\rho_2(1,i)=2^{\frac{1}{4}}\pi^{\frac{3}{8}}\sqrt{\Gamma\left(\frac{1}{4}\right)}e^{\frac{\pi}{24}-\frac{3i\pi}{16}}\end{eqnarray}

となります。



さて、一番面倒な主定理の証明ですが、長すぎるのでかなり天下り的になってしまいました。ご了承ください(後ろから読んでいくのを推奨します)。先に記号をいくつか定義します:

\begin{eqnarray}\displaystyle\zeta_2(s,w,z):&=&\sum_{m,n\geq{0}}^{} (m+nz+w)^{-s}\\\Gamma^{\star}(w,z):&=&\exp\left(\left.\frac{\partial}{\partial s}\zeta_2(s,w,z)\right|_{s=0}\right)\\\Gamma_2(w,z):&=&\rho_2(1,z)\Gamma^{\star}(w,z)\\LG(w):&=&\frac{1}{2\pi i}\int_{I(\lambda,\infty)}^{} \frac{e^{-wt}}{1-e^{-t}}\frac{\log t}{t^2}dt-\frac{\gamma-\pi i}{2}B_2(w)\end{eqnarray}

積分I(\lambda,\infty)(-\infty,\infty) から \mathbb{C} への写像 \phi:(-\infty,\infty)\rightarrow\mathbb{C} として

I(\lambda,\infty):\phi(u)=\begin{cases}

u & (u<-\lambda) \\
\lambda\exp\left(\pi i\frac{u+\lambda}{\lambda}\right) & (-\lambda\geq{u}\geq{\lambda}) \\
u & (u>\lambda)
\end{cases}

として定義されます。イメージとしては無限の長さを持つ丸底フラスコを右に倒した感じです。

B_n(w) はベルヌーイ多項式です。定義は B_1=\frac{1}{2} になるほう。


以下の補題3,4,5,6をひとまず認めることにします:



[補題3]


(1)
\displaystyle LG(w)=\frac{B_2(w)}{2}-\left.\frac{\partial}{\partial s}\zeta(s,w)\right|_{s=-1}

(2)
\displaystyle \frac{d}{dw}LG(w)=\log\frac{\sqrt{2\pi}}{\Gamma(w)}



[補題4]


(1)

\begin{eqnarray}\displaystyle LG(n)=-\frac{n^2}{2}\log n+\frac{3}{4}n^2-B_1(n\log n-n)-\frac{B_2}{2}\log n+c+O(n^{-1})\end{eqnarray}

(2)

\begin{eqnarray}\displaystyle LG(w+nz)=-\frac{B_2(w+nz)}{2}\log nz+\frac{3}{4}n^2z^2+nzB_1(w)+O(n^{-1})\end{eqnarray}



[補題5]


\begin{eqnarray}\displaystyle\log\Gamma^{\star}(w,z)=\frac{1}{z}LG(w)-B_1\log\frac{\Gamma(w)}{\sqrt{2\pi}}-\frac{B_2}{2}\psi(w)+O(w^{-1})\end{eqnarray}



[補題6]


(1)

\begin{eqnarray}\displaystyle\log\frac{\Gamma(w+nz)}{\sqrt{2\pi}}=\left(w+nz-\frac{1}{2}\right)\log n-n+\frac{\sqrt{2\pi}}+O(n^{-1})\end{eqnarray}

(2)

\begin{eqnarray}\displaystyle\psi(n)=\log n+O(n^{-1})\end{eqnarray}


補題6はスターリングの公式なので簡単に証明できるはずですが、補題3,4,5はどれも面倒です(3は比較的簡単。

補題7以降は証明を与えます。



[補題7]

(1)
\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\Gamma_2(w+z,z)}{\Gamma_2(w,z)}=\frac{\sqrt{2\pi}}{\Gamma(w)}\end{eqnarray}

(2)
\begin{eqnarray}\displaystyle\Gamma_2(1,z)=\sqrt{\frac{2\pi}{z}}\end{eqnarray}

[証明]

(1)

\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\Gamma_2(w+z,z)}{\Gamma_2(w,z)}&=&\frac{\Gamma^{\star}(w+z,z)}{\Gamma^{\star}(w,z)}\\&=&\exp\left(\left.\frac{\partial}{\partial s}\zeta_2(s,w+z,z)-\zeta_2(s,w,z)\right|_{s=0}\right)\end{eqnarray}

\begin{eqnarray}\displaystyle\zeta_2(s,w+z,z)-\zeta_2(s,w,z)&=&\sum_{m,n\geq{0}}^{} \left( (m+nz+w+z)^{-s}-(m+nz+w)^{-s}\right)\\&=&\left(\sum_{m\geq{1},n\geq{0}}^{} (m+nz+w)^{-s}\right)-\left(\sum_{m,n\geq{0}}^{} (m+nz+w)^{-s}\right)\\&=&-\sum_{m=0}^{\infty} (m+w)^{-s}\\&=&-\zeta(s,w)\end{eqnarray}

あとはレルヒの公式でおわり。

(2)

o-v-e-r-h-e-a-t.hatenablog.com

より

\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\Gamma_2(w+1,z)}{\Gamma_2(w,z)}=\frac{\sqrt{2\pi}}{\Gamma\left(\frac{w}{z}\right)}z^{\frac{1}{2}-\frac{w}{z}}\end{eqnarray}

がいえるので

\begin{eqnarray}\displaystyle\frac{\Gamma_2(w,z)}{\Gamma\left(\frac{w}{z}\right)}&=&\frac{\frac{1}{w}+O(1)}{\frac{z}{w}+O(1)}\\&=&\frac{1+O(w)}{z+O(w)}\end{eqnarray}

より、上の式で w\rightarrow{0} として \displaystyle\Gamma_2(1,z)=\sqrt{2\pi}\frac{1}{z}z^{\frac{1}{2}}=\sqrt{\frac{2\pi}{z}} となります。

[証明終]




[補題8]


\displaystyle\begin{align*}& \log\Gamma^{\star}(w,z)-\log\frac{\Gamma(w)}{\sqrt{2\pi}}-\sum_{m=1}^{n-1} \left(\log\frac{\Gamma(w+mz)}{\sqrt{2\pi}}-\left(mz+w-\frac{1}{2}\right)+mz-\frac{B_2(w)}{2mz}\right)\\& =\log\Gamma^{\star}(w+nz,z)+\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\Gamma(n)+z\sum_{m=1}^{n-1} \left( (m\log m-m)+\frac{n(n-1)}{2}\right)z\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\sum_{m=1}^{n-1} \frac{1}{m}\end{align*}

[証明]

補題7より

\displaystyle \log\Gamma^{\star}(w,z)-\log\Gamma^{\star}(w+z,z)=\log\frac{\Gamma(w)}{\sqrt{2\pi}}.

これを繰り返し使って

\begin{eqnarray}\displaystyle\log\Gamma^{\star}(w,z)&=&\log\Gamma^{\star}(w+nz,z)+\sum_{m=0}^{n-1} \frac{\Gamma(w+mz)}{\sqrt{2\pi}}\\&=&\log\frac{\Gamma(w)}{\sqrt{2\pi}}+\log\Gamma^{\star}(w+nz,z)\\&+&\sum_{m=1}^{n-1} \left(\log\frac{\Gamma(w+mz)}{\sqrt{2\pi}}-\left(mz+w-\frac{1}{2}\right)\log mz+mz-\frac{B_2(w)}{2mz}\right)\\&+&\sum_{m=1}^{n-1} \left(\left(mz+w-\frac{1}{2}\right)\log mz-mz+\frac{B_2(w)}{2mz}\right)\end{eqnarray}

となって、

\displaystyle\begin{align*}& \log\Gamma^{\star}(w,z)-\log\frac{\Gamma(w)}{\sqrt{2\pi}}-\sum_{m=1}^{n-1} \left(\log\frac{\Gamma(w+mz)}{\sqrt{2\pi}}-\left(mz+w-\frac{1}{2}\right)+mz-\frac{B_2(w)}{2mz}\right)\\& =\log\Gamma^{\star}(w+nz,z)+\frac{B_2(w)}{2z}\left(\sum_{m=1}^{n-1} \frac{1}{m}\right)+z\left(\sum_{m=1}^{n-1} (m\log m-m)\right)+\left(w-\frac{1}{2}\right)\log ( (n-1)!z)+z\sum_{m=1}^{n-1} mz\log z\\& =\log\Gamma^{\star}(w+nz,z)+\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\Gamma(n)+z\sum_{m=1}^{n-1} \left( (m\log m-m)+\frac{n(n-1)}{2}\right)z\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\sum_{m=1}^{n-1} \frac{1}{m}.\end{align*}

[証明終]



[補題9]

\displaystyle\log\Gamma^{\star}(w,z)-\log\frac{\Gamma(w)}{\sqrt{2\pi}}-\sum_{m=1}^{\infty} \left(\log\frac{\Gamma(w+mz)}{\sqrt{2\pi}}-\left(mz+w-\frac{1}{2}\right)+mz-\frac{B_2(w)}{2mz}\right)
\displaystyle =\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\sqrt{2\pi}+LG(1)z-\left(w-\frac{1}{2}\right)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma-\frac{B_2(w)}{2z}\log z+\left(w-\frac{1}{2}\right)\frac{\log z}{2}-\frac{z\log z}{12}

[証明]

補題8に補題4,5,6を代入する:

\begin{align*}\displaystyle & \log\Gamma^{\star}(w,z)-\log\frac{\Gamma(w)}{\sqrt{2\pi}}-\sum_{m=1}^{\infty} \left(\log\frac{\Gamma(w+mz)}{\sqrt{2\pi}}-\left(mz+w-\frac{1}{2}\right)+mz-\frac{B_2(w)}{2mz}\right)\\& =\frac{1}{z}LG(w+nz)+\frac{1}{2}\log\frac{\Gamma(w+nz)}{\sqrt{2\pi}}-\frac{z}{12}\psi(w+nz)+O(n^{-1})\\& +\left(w-\frac{1}{2}\right)\left(\left(n-\frac{1}{2}\right)\log n-n+\log\sqrt{2\pi}+O(n^{-1})\right)\\& +zLG(1)-zLG(n)+\frac{n(n-1)}{2}z\log z-\left(w-\frac{1}{2}\right)(n-1)\log z\\& +\frac{B_2(w)}{2z}\left(\log n+\gamma+O(n^{-1})\right)\\& =\frac{1}{z}\left(-\frac{1}{2}B_2(w+nz)\log nz+\frac{3}{4}n^2z^2+nzB_1(w)+O(n^{-1})\right)\\& +\frac{1}{2}\left(\left(nz+w-\frac{1}{2}\right)\log nz-nz+O(n^{-1})\right)-\frac{z}{12}(\log nz+O(n^{-1}))\\& +\left(w-\frac{1}{2}\right)\left(\left(n-\frac{1}{2}\right)\log n-n+\log\sqrt{2\pi}+O(n^{-1})\right)\\& +zLG(1)-z\left(-\frac{n^2}{2}\log n+\frac{3}{4}n^2+\frac{1}{2}(n\log n-n)-\frac{1}{12}\log n+O(n^{-1})\right)\\& +\frac{n(n-1)}{2}z\log z+\left(w-\frac{1}{2}\right)(n-1)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\log n+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma+O(n^{-1})\\& =-\frac{z}{2}B_2(w+nz)\log nz+\frac{3}{4}n^2z+nw-\frac{n}{2}+\frac{1}{2}\left(nz+w-\frac{1}{2}\right)\log nz-\frac{nz}{2}-\frac{z\log nz}{12}\\& +\left(w-\frac{1}{2}\right)\left(n-\frac{1}{2}\right)\log n-\left(w-\frac{1}{2}\right)n+\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\sqrt{2\pi}+zLG(1)+\frac{n^2z}{2}\log n-\frac{3}{4}n^2z\\& -\frac{z}{2}(n\log n-n)+\frac{z}{12}\log n+\frac{n(n-1)}{2}z\log z+\left(w-\frac{1}{2}\right)(n-1)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\log n+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma+O(n^{-1})\\& =\left(-\frac{1}{2z}B_2(w+nz)+\frac{1}{2}nz+\frac{w}{2}-\frac{1}{4}-\frac{z}{12}\right)\log nz+\left(\left(w-\frac{1}{2}\right)\left(n-\frac{1}{2}\right)+\frac{n^2z}{2}+\frac{12}{z}+\frac{B_2(w)}{2z}\right)\log n\\& +\left(w-\frac{1}{2}-\frac{z}{2}-\left(w-\frac{1}{2}\right)\right)n-\frac{z}{2}(n\log n-n)+\frac{n(n-1)}{2}z\log z\\& +\left(w-\frac{1}{2}\right)n\log z+\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\sqrt{2\pi}+zLG(1)-\left(w-\frac{1}{2}\right)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma+O(n^{-1})\\& =\left(-\frac{1}{2z}B_2(w+nz)+\frac{1}{2}nz+\frac{w}{2}-\frac{1}{4}-\frac{z}{12}\right)\log nz+\left(\left(w-\frac{1}{2}\right)\left(n-\frac{1}{2}\right)+\frac{n^2z}{2}+\frac{12}{z}+\frac{B_2(w)}{2z}\right)\log n\\& +\left(w-\frac{1}{2}-\frac{z}{2}-\left(w-\frac{1}{2}\right)\right)n-\frac{nz}{2}\log nz+\frac{n^2}{2}z\log z\\& +\left(w-\frac{1}{2}\right)n\log z+\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\sqrt{2\pi}+zLG(1)-\left(w-\frac{1}{2}\right)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma+O(n^{-1})\\& =\left(-\frac{1}{2z}B_2(w+nz)+\frac{w}{2}-\frac{1}{4}-\frac{z}{12}+\frac{n^2z}{12}\right)\log z\\& +\left(-\frac{1}{2z}B_2(w+nz)+\frac{w}{2}-\frac{1}{4}-\frac{z}{12}+\left(w-\frac{1}{2}\right)\left(n-\frac{1}{2}\right)+\frac{n^2z}{2}+\frac{z}{12}+\frac{B_2(w)}{2z}\right)\log n\\& +\left(w-\frac{1}{2}\right)n\log z+\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\sqrt{2\pi}+zLG(1)-\left(w-\frac{1}{2}\right)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma+O(n^{-1})\\& =\left(-\frac{1}{2z}B_2(w+nz)+\frac{w}{2}-\frac{1}{4}-\frac{z}{12}+\frac{n^2z}{12}\right)\log z\\& +\left(-wn-\frac{n^2z}{2}+\frac{n}{2}+\frac{w}{2}-\frac{1}{4}-\frac{z}{12}+wn-\frac{n}{2}-\frac{w}{2}+\frac{1}{4}+\frac{n^2z}{2}+\frac{z}{12}\right)\log n\\& +\left(w-\frac{1}{2}\right)n\log z+\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\sqrt{2\pi}+zLG(1)-\left(w-\frac{1}{2}\right)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma+O(n^{-1})\\& =\left(-\frac{w^2}{2z}-nw-\frac{n^2z}{2}+\frac{w}{2z}+\frac{n}{2}-\frac{1}{12z}+\frac{w}{2}-\frac{1}{4}-\frac{z}{12}+\frac{n^2z}{12}+wn-\frac{n}{2}\right)\log z\\& +\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\sqrt{2\pi}+zLG(1)-\left(w-\frac{1}{2}\right)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma+O(n^{-1})\\ &=\left(-\frac{B_2(w)}{2z}+\frac{w}{2}-\frac{1}{4}-\frac{z}{12}\right)\log z+\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\sqrt{2\pi}+zLG(1)-\left(w-\frac{1}{2}\right)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma+O(n^{-1})\\ &\overset{n\rightarrow\infty}{\rightarrow}\left(w-\frac{1}{2}\right)\log\sqrt{2\pi}+LG(1)z-\left(w-\frac{1}{2}\right)\log z+\frac{B_2(w)}{2z}\gamma-\frac{B_2(w)}{2z}\log z+\left(w-\frac{1}{2}\right)\frac{\log z}{2}-\frac{z\log z}{12}.\end{align*}

[証明終]




[補題10]

\begin{eqnarray}\displaystyle\rho_2(z)=(2\pi)^{\frac{3}{4}}\exp\left(-\frac{\gamma}{12z}-\frac{12}{z}+z\zeta'(-1)+\left(\frac{z}{12}-\frac{1}{4}+\frac{1}{12z}\right)\log z\right)\\\times\prod_{n=1}^{\infty} \frac{\sqrt{2\pi}}{\Gamma(1+nz)}\exp\left(\frac{1}{12nz}+\left(\frac{1}{2}+nz\right)\log nz-nz\right)\end{eqnarray}



[証明]

補題9で w=1 とすると

\begin{eqnarray}\displaystyle\log\Gamma^{\star}(1,z)-\log\frac{1}{\sqrt{2\pi}}-\sum_{m=1}^{\infty} \left(\log\frac{\Gamma(mz+1)}{\sqrt{2\pi}}-\left(mz+\frac{1}{2}\right)\log mz+mz-\frac{1}{12mz}\right)\\=\frac{\log 2\pi}{4}+LG(1)z-\frac{\log z}{2}+\frac{\gamma}{12z}-\frac{\log z}{12z}+\frac{\log z}{4}-\frac{z\log z}{12}.\end{eqnarray}

\displaystyle LG(1)=\frac{1}{12}-\zeta'(-1) より

\begin{eqnarray}\displaystyle\log\Gamma^{\star}(1,z)=-\frac{\log 2\pi}{4}+\frac{z}{12}-\zeta'(-1)z-\frac{\log z}{2}+\frac{\gamma}{12z}-\frac{\log z}{12z}+\frac{\log z}{4}-\frac{z\log z}{12}\\+\sum_{m=1}^{\infty} \left(\log\frac{\Gamma(mz+1)}{\sqrt{2\pi}}-\left(mz+\frac{1}{2}\right)\log mz+mz-\frac{1}{12mz}\right).\end{eqnarray}

補題7(2)より \displaystyle \Gamma_2(1,z)=\sqrt{\frac{2\pi}{z}}なので\Gamma^{\star} の定義より \displaystyle \Gamma^{\star}(1,z)=\frac{1}{\rho_2(1,z)}\sqrt{\frac{2\pi}{z}} となる、よって \displaystyle \log\Gamma^{\star}(1,z)=\frac{\log 2\pi}{2}-\frac{\log z}{2}-\log\rho_2(1,z) となって

\begin{eqnarray}\displaystyle -\log\rho_2(1,z)=-\frac{3\log 2\pi}{4}+\frac{z}{12}-\zeta'(-1)z+\frac{\gamma}{12z}-\frac{\log z}{12z}+\frac{\log z}{4}-\frac{z\log z}{12}\\+\sum_{m=1}^{\infty} \left(\log\frac{\Gamma(mz+1)}{\sqrt{2\pi}}-\left(mz+\frac{1}{2}\right)\log mz+mz-\frac{1}{12mz}\right).\end{eqnarray}

[証明終]

12/24の記事は盛田みずすまし氏の記事です、お楽しみに。

三角関数について(その1)

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:
NONA REEVES - メモリーズ ~ひと夏の記憶~


メモリーズ ~ひと夏の記憶~ [LIVE]/NONA REEVES




2017年5月13日に大阪で行われた第6回ロマンティック数学ナイトにおいて私はショートプレゼンを行い、その中で主定理として以下を示しました:


[定理1(レルヒ/1897)]


\displaystyle\begin{eqnarray}\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(m+ni)^4}=\frac{\varpi^4}{15}\end{eqnarray}

プレゼン内でこういうことを話しました。

バーゼル問題とこれって似てない?」

実際似てるんです。バーゼル問題は「自然数2乗逆数和」で、この問題(レルヒの定理と呼びましょう)は「ガウス整数の4乗逆数和」ですからね。

さて、ここでリーマンがかの有名なゼータ関数\zeta(s)を作り出したきっかけを思い出してみましょう。

それは紛れもなくバーゼル問題です。すなわち、リーマンはバーゼル問題の中にあった「自然数2乗の逆数和」を一般化して「自然数s乗の逆数和」とし、それをゼータ関数としたのです:

\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta(s)=\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s}\end{eqnarray}

このとき、私がレルヒだったらこう考えていたでしょう。

「リーマンのやつ、バーゼル問題を一般化してゼータを作ったな。じゃあ、オレだって同じことしてやろうじゃないか」

ということで、以下の関数を定義します:


[定義2]


\displaystyle\begin{eqnarray}G(k)=\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(m+ni)^k}\end{eqnarray}

見るからに面白そうなヤツを作り出してしまいました。しかし、数学者たるものこんなもんでは満足しないのです。アイゼンシュタインはこれをさらに拡張した関数を定めます。



[定義3]


\displaystyle\begin{eqnarray}G_k(z)=\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(mz+n)^k}\end{eqnarray}

これを「アイゼンシュタイン級数」といいます。こいつは非常に奇妙な関数で、何と言っても特徴的なのは「表も裏もゼータである」という点でしょう。

表も裏もゼータ、といってもなんのことかわからないかと思います。そりゃもちろん、私が勝手に考えた言葉ですから。

解析的整数論では割りと有名な事実として、こういうものがあります:


[命題4]


数列a_n\in{\mathbb{C}}に対して、以下のような級数を定める:

\displaystyle\begin{eqnarray}f(z)=\sum_{n=1}^{\infty} a_ne^{2\pi inz}\end{eqnarray}

これがz\in{H}=\{z|\mathrm{Im}(z)>0\}で収束する時、これのメリン変換はa_nゼータ関数L(s)を作り出す:

\displaystyle\begin{eqnarray}F(s)&=&\int_{0}^{\infty} f(iy)y^{s-1}dy\\&=&(2\pi)^{-s}\Gamma(s)L(s)\end{eqnarray}

ここで、

\displaystyle\begin{eqnarray}L(s)=\sum_{n=1}^{\infty} \frac{a_n}{n^s}\end{eqnarray}

これが言っているのは、要するに「数列の母関数をメリン変換したらゼータになるよ」ということです。

命題4ではゼータをだいぶ限定的な書き方(分母がn^sになっている)をしているのですが、実際のところ一般のゼータはこんなに堅苦しい定義ではありません。

分母が自然数s乗ではなく、整係数二次形式のs乗のような形になっている超フリーダムな格好をしたゼータもあります。ここでは詳しく述べませんが、エプシュタインのゼータ関数やヘッケのL関数などがそれですね(実は前記事で述べたRAESはそれの特殊な場合だったり)。


私は普段よく、関数の表や裏といった言い方をします。これはどういうことかというと、母関数を「表側」ゼータを「裏側」という風に呼んでいるのです。

つまり、一般の冪級数\sum_{}^{} a_nx^nx=e^{2\pi iz}を代入してメリン変換することで「裏返って」、たちまちゼータになってしまうわけですね。メリン変換には「逆メリン変換」というのもあるので、ゼータを再び裏返して表向きにすることももちろん可能です。

ここまで言うと、私が先程述べた「表も裏もゼータ」という言葉がはっきりとした輪郭を持ってくるかもしれません。

すなわち、アイゼンシュタイン級数は「母関数」でもあって「ゼータ」でもあるのです。その姿を見てみましょう:


[G_k(z)の表側]


\displaystyle\begin{eqnarray}G_k(z)=2\zeta(k)\left(1-\frac{2k}{B_k}\sum_{n=1}^{\infty} \sigma_{k-1}(n)e^{2\pi inz}\right)\end{eqnarray}


[G_k(z)の裏側]


\displaystyle\begin{eqnarray}G_k(z)=\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(mz+n)^k}\end{eqnarray}


裏側は先程見た定義のとおりですね。集合L_z=\{mz+n|m,n\in{\mathbb{Z}}\}の元のk乗逆数和を渡る和という点がゼータっぽい要素です。

不思議なのは表側の方です。なんと、約数関数とベルヌーイ数を係数にもつ冪級数として書けてしまいました(この事の証明はまた今度の記事でやります)。

これが、「両面ゼータ」ことアイゼンシュタイン級数の美しい姿です。



グレブナー基底大好きbotさん作「最近、妹がグレブナー基底に興味を持ち始めたのだが。」の二話にこんな言葉があります。

「実数は、まだ人類には早すぎる。」

そうなんです。実数なんてもんはめちゃくちゃでかいんです。

だとしたら、実数をさらに押し広げてしまった複素数なんてものはもっともっとでかくて、人類どころか宇宙人にも扱いづらい対象なのではないでしょうか。

しかし、アイゼンシュタイン級数G_k(z)と言うかたちをしています。カッコの中にいる変数はz、即ち複素数です。

こんなものは人類には扱えるはずがありません。ということで、名残惜しいですが限定してしまいましょう。


[定義5]


\displaystyle\begin{eqnarray}C_k(l)=\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(m\zeta_l+n)^k}\end{eqnarray}

ここで、

\zeta_l=\exp\left(\frac{2\pi i}{l}\right)

\zeta_lは所謂「1のl乗根」と呼ばれるやつです。

私たちにとって大きすぎた複素数も、ここまで制限してやるとある程度は扱えるようになります。





さて、ここで少しだけ話題転換。リーマンゼータの特殊値公式を見ていただきたいのです。


[定理6]


\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta(2n)=\frac{(-1)^{n+1}(2\pi)^{2n}}{2(2n)!}B_{2n}\end{eqnarray}

[定理6証明]

まず三角関数の無限積展開

\displaystyle\begin{eqnarray}\sin(x)=x\prod_{n=1}^{\infty} \left(1-\frac{x^2}{\pi^2n^2}\right)\end{eqnarray}

において、\displaystyle x=\frac{u}{2i}を代入します:

\displaystyle\begin{eqnarray}\sin\left(\frac{u}{2i}\right)&=&\frac{u}{2i}\prod_{n=1}^{\infty} \left(1+\frac{u^2}{4\pi^2n^2}\right)\\&=&\frac{u}{2i}\prod_{n=1}^{\infty} \frac{4\pi^2r^2+u^2}{4\pi^2r^2} \tag{1}\end{eqnarray}

ここで、オイラーの公式より\displaystyle\begin{eqnarray}\sin(x)=\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}\end{eqnarray}なので、

\displaystyle\begin{eqnarray}\sin\left(\frac{u}{2i}\right)&=&\frac{e^{i\frac{u}{2i}}-e^{-i\frac{u}{2i}}}{2i}\\&=&\frac{e^{\frac{u}{2}}-e^{-\frac{u}{2}}}{2i}\\&=&\frac{e^{\frac{u}{2}}(1-e^{-u})}{2i} \tag{2}\end{eqnarray}

(1)の対数微分

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{d}{du}\log\left(\frac{u}{2i}\prod_{n=1}^{\infty} \frac{4\pi^2r^2+u^2}{4\pi^2r^2}\right)&=&\frac{d}{du}\left(\log(u)-\log(2i)+\sum_{n=1}^{\infty} \log(4\pi^2r^2+u^2)-\log(4\pi^2r^2)\right)\\&=&\frac{1}{u}+\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2u}{4\pi^2r^2+u^2} \tag{3}\end{eqnarray}

(2)の対数微分もとって、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{d}{dx}\log\left(\frac{e^{\frac{u}{2}}(1-e^{-u})}{2i}\right)&=&\frac{d}{dx}\left(\frac{u}{2}+\log(1-e^{-u})-\log(2i)\right)\\&=&\frac{1}{2}+\frac{(-1)(-1)e^{-u}}{1-e^{-u}}\\&=&\frac{1}{2}+\frac{1}{e^u-1} \tag{4}\end{eqnarray}

(3),(4)はもちろん等しいので、以下等式を得ます:

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{2}+\frac{1}{e^u-1}=\frac{1}{u}+\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2u}{4\pi^2r^2+u^2} \tag{5}\end{eqnarray}

ここで、ベルヌーイ数の定義を思い出しましょう。こうでしたね:

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{u}{e^u-1}=\sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n\end{eqnarray}

最初のほうの値\displaystyle B_0=1, B_1=-\frac{1}{2}を用いてちょっと変形して、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{e^u-1}&=&\frac{1}{u}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n\\&=&\frac{1}{u}\frac{B_0}{0!}u^0+\frac{1}{u}\frac{B_1}{1!}u^1+\frac{1}{u}\sum_{n=2}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n\\&=&\frac{1}{u}-\frac{1}{2}+\frac{1}{u}\sum_{n=2}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n \tag{6}\end{eqnarray}

(6)(5)の左辺に代入すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{2}+\frac{1}{u}-\frac{1}{2}+\frac{1}{u}\sum_{n=2}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n&=&\frac{1}{u}+\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2u}{4\pi^2r^2+u^2}\\ \sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n&=&\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2u^2}{4\pi^2r^2+u^2} \end{eqnarray}

最後の変形では両辺にuをかけていることに注意してください。

そしてこの式を、等比級数の和公式などによって変形していきます。今までも割りと計算が大変でしたが、このパートはさらにめんどくさいので手元に紙とペンがあれば計算を追っていくのをオススメします:

\displaystyle\begin{eqnarray}\sum_{n=2}^{\infty} \frac{B_n}{n!}u^n&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \frac{u^2}{4\pi^2n^2+u^2}\\&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \frac{u^2}{4\pi^2n^2\left(1+\left(\frac{u}{2\pi n}\right)^2\right)}\\&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{u}{2\pi n}\right)^2\frac{1}{1+\left(\frac{u}{2\pi n}\right)^2}\\&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{u}{2\pi n}\right)^2\sum_{r=0}^{\infty} (-1)^r\left(\frac{u}{2\pi n}\right)^{2r}\\&=&2\sum_{r=0}^{\infty} (-1)^r\sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{u}{2\pi n}\right)^{2r+2}\\&=&2\sum_{k=1}^{\infty} (-1)^{k+1}\sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{u}{2\pi n}\right)^{2k}\\&=&2\sum_{k=1}^{\infty} (-1)^{k+1}\left(\frac{u}{2\pi}\right)^{2k}\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^{2k}}\\&=&2\sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^{k+1}}{(2\pi)^{2k}}\zeta(2k)u^{2k}\\&=&2\sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1}}{(2\pi)^{2n}}\zeta(2n)u^{2n}\end{eqnarray}

両辺の係数を比較すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{B_{2n}}{(2n)!}&=&\frac{(-1)^{n+1}}{(2\pi)^{2n}}\zeta(2n)\\ \zeta(2n)&=&\frac{(-1)^{n+1}(2\pi)^{2n}}{2(2n)!}B_{2n}\end{eqnarray}

以上にて結論を得ます。



この定理は\zeta(2n)有理数B_n\piで表現できる、というものです。

さて、ベルヌーイ数は母関数としての定義以外に次のような漸化式を満たすものとしても定められます:


[定義7]


\displaystyle\begin{eqnarray}B_0&=&1\\-(2n+1)B_{2n}&=&\sum_{k=1}^{n-1} \binom{2n}{2k}B_{2k}B_{2n-2k}\end{eqnarray}


そして、唐突ではありますが、次のような数列を導入します:



[定義8]


\displaystyle\begin{eqnarray}e_0&=&-1\\(2n+3)(4n-1)(4n+1)e_{4n}&=&\sum_{k=1}^{n-1} (4k-1)(4n-4k-1)\binom{4n}{4k}e_{4k}e_{4n-4k}\end{eqnarray}

有理数\{e_n\}_{n=0}^{\infty}を定め、これをフルヴィッツ数と呼ぶ。

定義8は、定義7とどことなく似ている気がしませんか?漸化式で定義されているところや、特定の倍数(定義7では2の倍数、定義8では4の倍数)の項以外が存在しないところや、漸化式の和に二項係数が出てきているところなどです。

ここでフルヴィッツ数を導入したのは、「ベルヌーイ数と似ているもの」を作るためです。

定理6で述べられている通り、\zeta(2n)はベルヌーイ数と円周率で作り上げられています。

なので、\zeta(2n)と似たものを作り上げようと思えば、ベルヌーイ数や円周率に似たものを導入する必要があるわけですね。

ベルヌーイ数と似たものを導入すれば、必然的に円周率と似たものも作る必要があります。そのために円周率の定義を見直しましょう。



[定義9]


定数\piは以下のように定義され、円周率と呼ばれる:

\displaystyle\begin{eqnarray}\pi=2\int_{0}^{1} \frac{dx}{\sqrt{1-x^2}}\end{eqnarray}


円周率を、積分を使って定義しています。図形的な視点からも、この定義が一番自然ですね。

そして、円周率と似た定数をまた積分で定義します。


[定義10]


定数\varpiは以下のように定義され、レムニスケート周率と呼ばれる:

\displaystyle\begin{eqnarray}\varpi=2\int_{0}^{1} \frac{dx}{\sqrt{1-x^4}}\end{eqnarray}


レムニスケート周率という名前は、文字通り「レムニスケート」という図形の周長の半分であることからきています。

円周率が円の周長の半分であることからもわかりますね。


さて、こうして私たちはベルヌーイ数と円周率にそれぞれ似ているものを作り出しました。これらを用いて、ようやく次の定理を述べることが出来ます。


[定理11]


\displaystyle\begin{eqnarray}C_{4n}(4)=\frac{(2\varpi)^4}{(4n)!}e_{4n}\end{eqnarray}

定理6とやはり似ていますね。違う点は以下の通り:


(1)定理6の分母には2があったのに、定理11の分母は階乗だけになっている
(2)定理6の分子には符号の補正があったのに、定理11にはない



相違点(1)の原因は、リーマンゼータ関数が「整数」ではなく「自然数」を渡っている点にあります。

もしリーマンが、

\displaystyle\begin{eqnarray}\zeta(s)=\sum_{n=-\infty\atop{n\neq{0}}}^{\infty} \frac{1}{n^s}\end{eqnarray}

と定義していれば、定理6の右辺の分母に2が現れることはなくなって定理11と揃ってくれます。

相違点(2)については、かなり複雑な要因が絡み合った結果生まれた相違点なので今後の記事に回すことにします。ごめんなさい。


では、定理11の証明をしていきましょう...といいたいところですが、そのためにはまだ一人足りないメンバーがいます。というわけで呼びました。


[定義12]


\displaystyle\begin{eqnarray}\wp(z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{(z-l)^2}-\frac{1}{z^2}\end{eqnarray}

ただし、ここでLは二つの複素数\omega_1,\omega_2によって決まる集合

\displaystyle\begin{eqnarray}L=\{m\omega_1+n\omega_2|m,n\in{\mathbb{Z}}\}\end{eqnarray}

である。

Lは一般的に「格子」なんて言われる集合ですが、私はこの名称が(なんかダサいから)嫌いなので英名のlatticeと呼ぶことにします。

そして、関数\wp(z)はいわゆるワイエルシュトラスの楕円関数ですね。この記事タイトルが「三角関数について」である理由は、この楕円関数と三角関数の著しい類似を示すことが主目的だからです(といっても、この記事でその類似が明らかになるのは定理11だけですが...)。

\wp(z)を扱いやすいように変形するためには、まず等比級数の公式をつかいます。

\displaystyle\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+x^3+\cdots

ですね。次に、この両辺を微分します。

\displaystyle\frac{1}{(1-x)^2}=1+2x+3x^2+4x^3+\cdots

x=\frac{z}{l}を代入すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{(1-\frac{z}{l})^2}=1+2\frac{z}{l}+3\frac{z^2}{l^2}+4\frac{z^3}{l^3}\cdots\tag{7}\end{eqnarray}

となるので、両辺から1を引いて\displaystyle\frac{1}{l^2}を掛けると

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{1}{(l-z)^2}-\frac{1}{l^2}=2\frac{z}{l^3}+3\frac{z^2}{l^5}+4\frac{z^3}{l^6}\cdots\end{eqnarray}

となります。これを定義12にある式に代入すると、以下を得ます:

\displaystyle\begin{eqnarray}\wp(z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} 2\frac{z}{l^3}+3\frac{z^2}{l^5}+4\frac{z^3}{l^6}\cdots\tag{8}\end{eqnarray}

(7)でうまく収束するように小さくzをとったとき、式(8)の二重級数はともに絶対一様収束するので和を交換でき、

\displaystyle\begin{eqnarray}\wp(z)&=&\frac{1}{z^2}+\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \sum_{n=1}^{\infty} (n+1)\frac{z^n}{l^{n+2}}\\&=&\frac{1}{z^2}+\sum_{n=1}^{\infty} \sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} (n+1)\frac{z^n}{l^{n+2}}\\&=&\sum_{n=1}^{\infty} (n+1)G_{n+2}z^n\end{eqnarray}

とできます。ここで、

\displaystyle\begin{eqnarray}G_n(L)=\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{l^n}\end{eqnarray}

と置いています。関数G_n(L)n,\omega_1,\omega_2によって決まっていることに注意して下さい。

\omega_1=1,\omega_2=iとおくと、

\displaystyle\begin{eqnarray}G_k(L)&=&\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{l^k}\\&=&\sum_{m,n=-\infty\atop{(m,n)\neq{(0,0)}}}^{\infty} \frac{1}{(m+ni)^k}\end{eqnarray}

奇数2n+1に対し、

\displaystyle\begin{eqnarray}G_{2n+1}(L)&=&\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{l^{2n+1}}\\&=&\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{(-l)^{2n+1}}\\&=&-\sum_{0\neq{l}\in{L}}^{} \frac{1}{l^{2n+1}}\\&=&-G_{2n+1}(L)\end{eqnarray}

ゆえにG_{2n+1}(L)=0となるため、\wp(z)の展開は偶数項だけを渡る和となります:

\displaystyle\begin{eqnarray}\wp(z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{n=1}^{\infty} (2n+1)G_{2n+2}(L)z^{2n}\end{eqnarray}

これである程度は扱いやすい形になったのではないでしょうか。

とりあえず、長くなるので今回の記事はここまでとしておきます。次回では、導いた\wp(z)の展開と微分方程式を利用して定理11を示す予定です。