読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

たけのこ赤軍の自由帳

整数論とかNonaReevesとかが好きな中学生のブログ。

実解析的アイゼンシュタイン級数

この記事はこの曲を聴きながら読むのがオススメです:



「実解析的アイゼンシュタイン級数


このおなまえを聞いて、ピンとくる人はどれくらいいるでしょうか。

Wikipediaには記事がありますが、特殊関数の中で有名な方ではありません。

しかしコイツは、自身が持つ強烈なフーリエ展開を背景とした素数定理の別証明を与えられるほど強い性質を持っています。

今回はその性質の一部を紹介したいと思います(今後この長ったらしい名前を呼ぶのはかったるいのでReal Analytic Eisenstein Seriesの頭文字からRAESと呼びます)。



<定義>


\mathrm{Im}(z)>0,\mathrm{Re}(s)>1に対して

\displaystyle E(s,z)=\frac{1}{2}y^s\sum_{(c,d)=1}^{} |cz+d|^{-2s}

とする。ただし、z=x+yiである。



まぁ定義だけ見せられてもなんのこっちゃかわからないと思うので、基本的性質を示していきましょう。



[定理1]


\left(\begin{array}{ccc} a & b\\ c & d\end{array}\right)\in SL(2,\mathbb{Z})に対して、

\displaystyle E\left(s,\frac{az+b}{cz+d}\right)=E(s,z)

[証明]


これを示すには、\displaystyle E(s,z+1)=E(s,-\frac{1}{z})=E(s,z)を示せば十分です。

なぜなら、\left(\begin{array}{ccc} 1 & 1\\ 0 & 1\end{array}\right)\left(\begin{array}{ccc} 0 & -1\\ 1 & 0\end{array}\right)SL(2,\mathbb{Z})の生成元だからです。前者は

\displaystyle\begin{eqnarray}E(s,z+1)&=&\frac{1}{2}y^s\sum_{(c,d)=1}^{} |cz+(c+d)|^{-2s}\\&=&E(s,z)\end{eqnarray}

とすぐに確かめられますね。

c,dが互いに素ならばc,c+dも互いに素ということは既知とします。後者のほうは、

\displaystyle E(s,-\frac{1}{z})=\frac{1}{2}\sum_{(c,d)=1}^{} \frac{\mathrm{Im}\left(-\frac{1}{z}\right)^s}{|-\frac{c}{z}+d|^{2s}}

ですが、

\displaystyle\begin{eqnarray}\mathrm{Im}\left(-\frac{1}{z}\right)&=&\mathrm{Im}\left(-\frac{\bar{z}}{z\bar{z}}\right)\\&=&-\frac{\mathrm{Im}(\bar{z})}{|z|^2}\\&=&\frac{\mathrm{Im}(z)}{|z|^2}\end{eqnarray}

を用いると

\displaystyle\begin{eqnarray}E\left(s,-\frac{1}{z}\right)&=&\frac{1}{2}\sum_{(c,d)=1}^{}\frac{y^s}{|dz-c|^{2s}}\\&=&E(s,z)\end{eqnarray}

となります。これで第二変数zSL(2,\mathbb{Z})の元に対する不変性(これを保型形式の保型性と言ったりします)が示されました。



[定理2]


\displaystyle E(s,z)=y^s+\frac{\hat{\zeta}(2s-1)}{\hat{\zeta}(2s)}y^{1-s}\displaystyle +\frac{4}{\hat{\zeta}(2s)}\sum_{m=1}^{\infty} m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

ただし、

\displaystyle\begin{eqnarray}\hat{\zeta}(s)&=&\pi^{-\frac{s}{2}}\Gamma\left(\frac{s}{2}\right)\zeta(s)\\ \sigma_s(m)&=&\sum_{d|m}^{} d^s\\ K_s(z)&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{s-1}du\end{eqnarray}


いやぁ、強烈ですね。

これが最初に述べたRAESのフーリエ展開です。定理1で周期1をもつことを示しているから可能ということですね。

フーリエ展開は\displaystyle \sum_{m=-\infty}^{\infty} a_me^{2\pi imz}の形をしてるのが普通だろ!いい加減にしろ!」なんてお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、この場合は初めの二項が今言った式でのm=0、つまり「定数項」にあたります。そして、第三項の級数の部分がm\neq0の部分です。


[証明]


変数zが周期を持つのでフーリエ展開できる、ということでしたが、周期は(x+yi)+1\rightarrow (x+yi)なので実質xが周期を持つことになります。

よってこう書くことができます:

E(s,z)=\displaystyle\sum_{m=-\infty}^{\infty} a_m(y)e^{2\pi imx}

このフーリエ係数は、展開の定義より

\displaystyle a_m(y)=\int_{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}} E_(s,x+iy)e^{-2\pi imx}dx

と書けます。

これを計算するわけですが、めんどくさいのでちょっと楽な方法を使いましょう。

まず、完備RAESを定義します。

\hat{E}(s,z)=\hat{\zeta}(2s)E(s,z)

完備リーマンゼータ\hat{\zeta}の定義はさきほど述べましたね。これを次のように分割してしまいます:

\displaystyle\begin{eqnarray}\hat{E}(s,z)&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\zeta(2s)\frac{1}{2}\sum_{(c,d)=1}^{} \frac{y^s}{|cz+d|^{2s}}\\&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\frac{1}{2}\sum_{l=1}^{\infty} l^{-2s}\sum_{(c,d)=1}^{} \frac{y^s}{|cz+d|^{2s}}\\&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\frac{1}{2}\sum_{l=1}^{\infty} \sum_{(c,d)=1}^{} \frac{y^s}{|lcz+ld|^{2s}}\\&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\frac{1}{2}\sum_{(m,n=-\infty)'}^{\infty} \frac{y^s}{|mz+n|^{2s}}\\&=&(m=0の項)+(m\neq0の項)\end{eqnarray}

ただし、下から二行目のシグマの下についているダッシュ記号は「m,nがともに0であることはない」という意味です。

ここで、

\displaystyle\begin{eqnarray}(m=0の項)&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\frac{1}{2}\sum_{(n=-\infty)'}^{\infty}\frac{y^s}{|n|^{2s}}\\&=&\pi^{-s}\Gamma(s)y^s\sum_{n=1}^{\infty} n^{-2s}\\&=&y^s\hat{\zeta}(2s)\end{eqnarray}

となります。

まぁこれを仮に等式Aとでもしておきましょう。

\displaystyle\begin{eqnarray}|mz+n|^{2s}&=&\left(\sqrt{\mathrm{Re}(mz+n)^2+\mathrm{Im}(mz+n)^2}\right)^2\\&=&\mathrm{Re}(m(x+iy)+n)^2+\mathrm{Im}(m(x+iy)+n)^2\\&=&(mx+n)^2+(my)^2\end{eqnarray}

に注意すると、

\displaystyle\begin{eqnarray}(m\neq0の項)&=&\pi^{-s}\Gamma(s)\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \frac{y^s}{|mz+n|^{-2s}}\\&=&\pi^{-s}y^s\Gamma(s)\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \left((mx+n)^2+(my)^2\right)^{-s}\end{eqnarray}

がわかります。

ここで、a>0にたいして

\displaystyle a^{-s}\Gamma(s)=\int_{0}^{\infty} e^{-au}u^{s-1}du

が成立すること(証明は略、au=tのような変数変換をすることで簡単に示せます)を用いると、

\displaystyle (m\neq0の項)=y^s\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \int_{0}^{\infty} e^{-\pi((mx+n)^2+(my)^2)u}u^{s-1}du

となります。

さらに、ポアソン和公式から導かれる定理

\displaystyle\sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{-\pi(mx+n)^2u}=\frac{1}{\sqrt{u}}\sum_{n=-\infty}^{\infty} e^{2\pi imnx-\frac{\pi n^2}{u}}

を使って(証明はまた今度、ポアソン和公式の紹介も兼ねて新しい記事を書きます)、

\displaystyle\begin{eqnarray}(m\neq0の項)&=&y^s\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \left(\int_{0}^{\infty} e^{-\left(\pi m^2y^2u+\frac{\pi n^2}{u}\right)}u^{s-\frac{3}{2}}du\right)e^{2\pi imnx}\\&=&y^s\sum_{m=1}^{\infty} \int_{0}^{\infty} e^{-\pi m^2y^2u}u^{s-\frac{3}{2}}du+2y^s\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=1}^{\infty} \left(\int_{0}^{\infty} e^{-\left(\pi m^2y^2u+\frac{\pi n^2}{u}\right)}u^{s-\frac{3}{2}}du\right)\cos(2\pi mnx)\end{eqnarray}

がわかりますね。

このうちの前の項は、

\displaystyle\begin{eqnarray}y^s\sum_{m=1}^{\infty} \left(\int_{0}^{\infty} e^{-\pi m^2y^2u}u^{s-\frac{3}{2}}du\right)&=&y^s\sum_{m=1}^{\infty} (\pi m^2y^2)^{-\left(s-\frac{1}{2}\right)}\Gamma\left(s-\frac{1}{2}\right)\\&=&y^{1-s}\Gamma\left(s-\frac{1}{2}\right)\sum_{m=1}^{\infty} \pi^{-\left(s-\frac{1}{2}\right)}m^{1-2s}y^{1-s}\\&=&\pi^{-\left(s-\frac{1}{2}\right)}\Gamma\left(s-\frac{1}{2}\right)\zeta(2s-1)\\&=&y^{1-s}\hat{\zeta}(2s-1)\end{eqnarray}

となり、後ろの項は積分の変数を\displaystyle v=\frac{my}{n}uとすることで

\displaystyle\begin{eqnarray}\frac{du}{dv}&=&\frac{n}{my}\\ \pi m^2y^2u+\frac{\pi n^2}{u}&=&\pi mny\left(\frac{myu}{n}+\frac{n}{myu}\right)=\pi mny\left(v+\frac{1}{v}\right)\end{eqnarray}

であることから

\displaystyle\begin{eqnarray}\int_{0}^{\infty} e^{-\left(\pi m^2y^2u+\frac{\pi n^2}{u}\right)}u^{s-\frac{3}{2}}du&=&\int_{0}^{\infty} e^{-\pi mny\left(v+\frac{1}{v}\right)}v^{s-\frac{3}{2}}dv\times \left(\frac{n}{my}\right)^{s-\frac{1}{2}}\\&=&\left(\frac{n}{my}\right)^{s-\frac{1}{2}}\times{2}\times K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi mny)\end{eqnarray}

を導けます。

こうして得た前の項、後ろの項を足すと、

\displaystyle\begin{eqnarray}(m\neq0の項)&=&\hat{\zeta}(1-s)y^{1-s}+2y^s\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=1}^{\infty} \left(\frac{n}{my}\right)^{s-\frac{1}{2}}\times 2 \times K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi mny)\cos(2\pi mnx)\\&=&\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}+4y^s\left(\frac{1}{y}\right)^{s-\frac{1}{2}}\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=1}^{\infty} n^{s-\frac{1}{2}}m^{\frac{1}{2}-s}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi mny)\cos(2\pi mnx)\\&=&\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}+4\sum_{m=1}^{\infty} \sum_{n=1}^{\infty} (mn)^{s-\frac{1}{2}}m^{1-2s}\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi mny)\cos(2\pi mnx)\\&=&\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}+4\sum_{l=1}^{\infty} l^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(l)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi ly)\cos(2\pi lx)\end{eqnarray}

となります。

ただし、最後の変形ではmnをあらたにlという変数に置き換えることでシグマを一つ減らす手法を取っています。これと等式Aをまとめると、

\displaystyle \hat{E}(s,z)=\hat{\zeta}(2s)y^s+\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}\displaystyle +4\sum_{l=1}^{\infty} l^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(l)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

なので、両辺を\hat{\zeta}(2s)で割ってシグマの変数をlからmに差し替えることで

\displaystyle E(s,z)=y^s+\frac{\hat{\zeta}(2s-1)}{\hat{\zeta}(2s)}y^{1-s}\displaystyle +\frac{4}{\hat{\zeta}(2s)}\sum_{m=1}^{\infty} m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

が得られます。これで定理2の証明が終了です。


でもこの記事はこれだけでは終わりません。

たしかに定理としてのインパクトはこのフーリエ展開が一番ですが、この結果を使った非常に美しい等式があります。そちらがメインです:




[定理3]


\hat{E}(s,z)=\hat{E}(1-s,z)


<証明>

\displaystyle \hat{E}(s,z)=\hat{\zeta}(2s)y^s+\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}\displaystyle +4\sum_{m=0}^{\infty} m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)\sqrt{y}K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

より

\displaystyle \hat{E}(1-s,z)=\hat{\zeta}(2-2s)y^{1-s}+\hat{\zeta}(1-2s)y^s\displaystyle +4\sum_{m=0}^{\infty} m^{\frac{1}{2}-s}\sigma_{2s-1}(m)\sqrt{y}K_{\frac{1}{2}-s}(2\pi my)\cos(2\pi mx)

となります。

そこで、有名な関数等式\hat{\zeta}(s)=\hat{\zeta}(1-s)を使えば

\displaystyle\begin{eqnarray}\hat{\zeta}(2-2s)y^{1-s}+\hat{\zeta}(1-2s)y^s&=&\hat{\zeta}\left(1-(2-2s)\right)y^{1-s}+\hat{\zeta}\left(1-(1-2s)\right)y^s\\&=&\hat{\zeta}(2s)y^s+\hat{\zeta}(2s-1)y^{1-s}\end{eqnarray}

となって、\hat{E}(s,z)\hat{E}(1-s,z)の第一項と第二項が等しいことがわかります。第三項が等しいことを示すには、

(1) \displaystyle m^{s-\frac{1}{2}}\sigma_{1-2s}(m)=m^{\frac{1}{2}-s}\sigma_{2s-1}(m)

(2) \displaystyle K_{s-\frac{1}{2}}(2\pi my)=K_{\frac{1}{2}-s}(2\pi my)

をいえばよいですね。

ここは思い切って一般化してしまって、

(1)' \sigma_t(m)=m^t\sigma_{-t}(m)

(2)' K_s(z)=K_{-s}(z)

を示すことにしましょう。


[(1)'証明]


\displaystyle\begin{eqnarray}\sigma_t(m)&=&\sum_{d|m}^{} d^t\\&=&\sum_{d|m}^{} \left(\frac{m}{d}\right)^t\\&=&m^t\sum_{d|m}^{} d^{-t}\\&=&m^t\sigma_{-t}(m)\end{eqnarray}


[(2)'証明]


定義より

\displaystyle K_{-s}(z)=\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{-s-1}du

ですが、ここで変数変換\displaystyle t=\frac{1}{u}を施します。すると、

\displaystyle\begin{eqnarray} K_{-s}(z)&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(u+\frac{1}{u}\right)\right)u^{-s-1}du&=&\frac{1}{2}\int_{\infty}^{0}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(\frac{1}{t}+t\right)\right)t^{s+1}\left(-t^{-2}\right)dt\\&=&\frac{1}{2}\int_{0}^{\infty}\exp\left(-\frac{z}{2}\left(t+\frac{1}{t}\right)\right)t^{s-1}dt\end{eqnarray}

となり、証明されます。

以上より、定理3の証明も終了です。



本記事では記載しませんでしたが、RAESにはもう一つ重要な性質として「ラプラシアンに対する固有関数である」というものがあります。

この性質と、定理1をあわせた性質を持つ関数として、「マースの波動形式」というものが定義されます(厳密にはフーリエ係数の評価も要求される)。

これはうまい具合にRAESの一般化となっていて、実は「ラプラシアンに対する固有関数である」ということから定理2のフーリエ展開が波動形式においても導けることがわかります。

一般の波動形式に対するリーマン予想とも呼べるような未解決問題「セルバーグの\displaystyle\frac{1}{4}予想」というものがあるのですが、これについても今後記事を書く予定です。